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日経美女式セミナー講演 2014年5月「ヨガで引出す働く女性の美しさ」

テーマ 1 : イスヨガを体験してみよう 

みなさま、こんにちは。ご紹介に預かりました岡部朋子と申します。
本日は「美女式」というおそれおおいタイトルをいただきながらの講演となりますが、できるだけわかりやすくヨガのお話をしたいと思っています。

ヨガの本来の発音はヨーガですが、今日の講座ではわかりやすくヨガという言葉を使いたいと思います。

45分と長丁場なので、まずは座りっぱなしだった姿勢を少しほぐしていきたいと思います。

両手を胸にそっとあててみましょう。

鼻から息を吐いてみましょうか。

少し、ほっとした気持ちになりますでしょうか。

もう2,3回息を吐いてみましょう。自分の体がほっとしていく様子、心もほっとしていく様子を観察してみましょう。

今度は、首をすくめて後ろにひいて、ストン。もう一度、後ろにひいて、ストン。

息を吸いながら、両腕の手のひらを上に向けて、今度は(ゆっくり)ゆっくり息を吐きながら手のひらを下に向けてみましょう。吸って、手のひら上、吐いて、手のひら下。

今度は、吸って背中を軽く反らせます。このとき首が反りすぎないように。吐いて背中を丸め、おへそを覗き込みます。吸って反らせて、吐いておへそ。

今度は目の疲れをほぐしていきましょう。両手をこすりあわせ、あたためましょう。その手を静かに目の上に乗せます。軽くあごをひいて、鼻でゆっくり呼吸します。もう数回、暗闇のなかで呼吸の音を聴いていきましょう。

目を左右に動かしてみましょう。左を見て、今度は右を見ます。ゆっくり左に視線を戻し、右に視線を移します。繰り返します。ゆっくり真ん中に視線を戻します。

さて、今行なってみた一連の動作ですが、やりながら何かいいわるいの判断や評価をした人はいますでしょうか。おそらく、私にいわれるがまま、からだを動かしていらっしゃったかと思います。

【ヨガでは良い悪いを考えないでみる】

実は、この心のあり方のことをヨガといいます。おそらく皆さんヨガとは、頭の上に脚が乗っかっていたり、背中を反らしたり、というイメージを持たれているかもしれませんが、もちろんそういうポーズがあることは確かです。でも、そのようなポーズは、今皆さんがつかの間の間味わった「物事のいいわるいを判断することを忘れる」という境地にたどりつくための準備運動なのです。

別な例で説明してみたいと思います。
「ヨガとは何か」これは実は壮大すぎるテーマなんです。なぜなら毎年世界のどこかで新しいヨガが発明されています。何とかヨガ、何とかヨガ。そして、伝統的なヨガも、流派によってお師匠さんがたくさんいます。みなそれぞれ言っていることが微妙に違う。そして、ヨガの手法も実は様々です。呼吸法のこともヨガと言いますし、ポーズのことをヨガともいう。瞑想もヨガだし、カルマヨガという、良い行いをするというヨガもあります。つまり、何がヨガか、ということを説明するには、ヨガはあまりにも複雑に発展しすぎてしまっているのです。

でも、幸いなことにヨガの語源はひとつです。

【ヨガの語源「つなぐ、結ぶ、絆、調和」】

ヨガのもともとの語源はつなぐ、結ぶ、という意味で、何と何をつなぐのかというとそれは、インドの哲学やサンスクリット語の文法と深く関わってくるのですが、インド哲学やサンスクリット文法の背景にあるのは「二元論」です。二元論とは陰と陽、月と太陽、男性と女性、変わるものと変わらないもの、のように、あるひとつの存在には対照的な概念が存在する、というものの見方です。私たちは往々にして、二つあるとそのどちらが優れているのか、どちらが得か、どちらが正しいのか、ということを考えてしまいます。宗教戦争がわかりやすいですね。自分たちの神様は正しくて、他の神様はけしからん、と主張するから今も世界のどこかでドンパチドンパチやっているわけです。でも実際には、こちらの歴史にはこちらの神様がいたわけだし、こちらの文化ではこちらの神様が育っていった。どっちもありなわけです。どっちもありなんだから、仲良くしようよ、というのがヨガがいっていることで、つまり

【調和する = 正しいも間違っているもないのだから】

お互い様だし、ということを思い出そうよ、という教えなのです。対立する考え方を調和させていく、という姿勢のことをヨガといいます。

私たちが誰しも抱えている両義性をアンビバレントといいます。たとえばこんなことはないでしょうか。子供は可愛いけど、仕事はしたい。家族は大事だけど、自分の時間も欲しい。太りたくないけど、アイスクリームの誘惑には勝てない。

【アンビバレントな自分】

子供は可愛いけど、仕事はしたい。家族は大事だけど、自分の時間も欲しい。太りたくないけど、アイスクリームの誘惑には勝てないなど、でもどちらの自分もやっぱり本当の自分ではないでしょうか。それをどっちが正しいんだろう、と思ってもきりがないから、両方認めちゃいましょう、ということを、今度は次のように体験してみましょう。

右手に、自分の好きなもの、大切な人、大事な思い出、自分の誇り、将来の夢、など自分が大好きなものをたくさん乗せてみましょう。きっとみなさん、ずしっと重たいと思います。

今度は左手を出していただいて、そこには自分のなかのダークな部分、コンプレックス、過去の消したい思い出、将来への不安、苦手な上司、などを乗せてみましょう。こちらも別な意味できっとずしっと重いですね。

では、右手しかない人、いますか? きっといませんね。では、もし神様がこちらを廃品回収してくれるといったら、喜んで差し出しますか? それもなんだか、惜しい感じがすると思います。

というように、私たちはだれしも、いいこともたくさんあったし、嫌なこともあった人生を生きてきているわけです。でも、結局、今こうして生きていることはすべての証拠で、何があっても今日のこの時間までは命はあったわけで、こうやって椅子に座っている。そして縁あって隣に座りました、と、両手を胸の前であわせ、隣近所の方と「こんにちは」「ナマステ」と、ご挨拶してみましょう。こんにちは、ナマステ、

【不完全だから愛おしい】

そして、今お互いに顔を見合わせている相手の方のその優しい目尻を覚えていてほしいのです。この表情のことをヨガというのかもしれません。つまり、自分も不完全だけど、となりに座っているこの人も、決して完璧ではない。こういう大きい会場に入ると、隣の人がやたら立派に見えてしまうものです。でも、立派そうに見えるあの人も、きっとコンプレックスを持っているんだ、と思えば少し安心しませんか。

 

 

テーマ2 : 働く女性の美しさとヨガ 

さて、そろそろヨガが働く女性の美しさにどんなメリットがあるのか、という話題にうつってていきたいと思います。

まず最初の問題提起ですが、

【日本の女性は努力家だ】

日本の女性はとりわけ努力家だ、ということに気がついていただきたい、ということなのです。今日このセミナーにこうしてご参加いただいているというだけで、皆さんも普段からきっとまじめな頑張り屋さんなのだと思います。かくいう私も、今年から幼稚園に入った息子と仕事の両立で、頑張ってしまっている一人です。

それでも子供が産まれる前は「私はヨガの先生なので忙しくしないことが仕事です」なんて悠長なことを言っていましたが、生まれてからはそんなこと言ってられなくなりました。あまりにいろんなことが自分の肩にのしかかってきているような気がして、夫婦で産後クライシスも経験しました。体力も限界を感じ、心はもっとピンチです。日記には毎日「神経衰弱」と書いていました。

でも、ある日何を血迷ったのか、10mほどの横断歩道を走ることすら避けていた私が、レーシック、視力回復の手術を受け、トライアスロンへの挑戦を決めたんですね。なぜか。いろんな理由がありますがひとつは震災もあります。もしまた地震が起こったら、私はこの子を担いで逃げる体力はまずない。と思ったら怖くなったんですね。コンタクトを外したら子供の顔すら見えません。

子育てが大変なら、こうなったら頼れるものはすべて頼って、完璧にこなしてみせる!
両親にも協力してもらい、仕事も増やし、家事と子育てだけでなく、がらにもなく幼稚園の幹事にまで立候補し、はんこを押すだけですが、マンションの理事長もやっています。
リストラティブヨガという効果的なリラックスヨガを自ら実践し、主人よ、みててご覧なさい、たとえ昼寝すらパーフェクトにこなす妻を、
というほど実際はできていないんですが、努力すればきっとなんだってできる、という気持ちだけは一人前なんですね。

でも、頑張る、ってみんな「何かをする」ってことなんですよね。

【生活がどんどんDo で満たされていく】

頑張れば頑張るほど、生活がどんどんDoで満たされていく。それはエキサイティングなことでもあります。でも、ここにきて5,000年続くヨガの叡智は私になんと囁くのか。

【それじゃもたんよ 】

それじゃもたんよ。働いたらちゃんと休め。食べたら動け。汚れたら洗え。
つまり、Doを増やすなら、その分 Undo、つまり何もしない時間も増やしていかないと、心と体のバランスを崩すぞ、ということです。

ヨガのポーズをサンスクリット語で「アーサナ」といいます。これはサンスクリット語の基礎母音である「ア」という音が派生したものですが「ア」とはもともと「いる」という意味なんです。する、ではなくて、いる。DO ではなくて、BEがポーズ、という言葉の語源です。

【ポーズ = いる】

インドネシアのバリ島やインドで石でできた塔の上に椅子が乗っかっているのを見たことがある人はいないでしょうか。日本の御神輿の上にも椅子が乗ってたりします。これは、お祭りのときに「神様、どうか降りてきてください。降りてきてそこにおっちゃんしていてください、それだけでいいんです」というための椅子なんです。神様はいるだけでありがたい。でも、私たち人間は認めてもらうためにあくせくDoを積み重ねる。

でも、皆さんが赤ちゃんの頃を想像してみてください。皆さんが生まれたとき、皆さんのご家族はどんなに喜んだことでしょう。無事に生まれてきてくれてありがとう。きみがいるだけで、みんなが幸せになるんだよ。

【あなたが笑うと、幸せになる人がいるんだよ】

皆さんは本当はいるだけで価値がある。だけど、仕事という現場ではそうもいかない。どんなに美しい笑顔をみせたってそれだけだと「笑っている暇があったら仕事して」と言われて終わり、仕事にならないから、何かをしなくてはいけない。

先ほど、ヨガとは善悪の判断を手放すこと、というお話をしましたが、職場でそんな悠長なことを言っていたら大目玉ですね。私たちはいつもどっちが優れているか、どっちを選べばうまくいくか、どちらがよりよい選択か、ということを迫られ続け、判断し続けています。でも、あまりにもそれがエスカレートしてしまうと、やっぱり心と体はしんどくなってくるわけです。それでも私たちはいつも、どっちのスーパーの卵が安いか、子供をどちらの学校に入れたらいいか、ということを考えることをやめられないのです。

話を戻しますが、日本の女性が努力家だとしたら、努力した分、自分をいたわったり、自分を許してあげる時間でバランスをとってほしいのです。ヨガの教えがバランス、調和することだとしたら、私たちはついつい頑張っている自分にブレーキをかけられなくなってしまい、心と体がSOSを出してから気がつく。

【頑張ったな、と思ったら、ちゃんとご褒美でバランスを さもないと、心と身体は反撃する。】

グレる、というと私の時代がわかってしまいますが、私たちの心と体はとても正直で、アメとムチの、アメをもらえないとふてくされてしまうようにできているのです。

なので、善悪の判断をしないでください、競争しないでください、ということではないのです。競争も結構、比較も結構、というか、それが経済社会を生きる人間の自然です。でも、様々な技術進歩によって、わたしたちはもしかして本来は必要ないぐらいの競争をあおられ、電子機器の刺激にさらされ、時間に追われた生活をしているかもしれないのです。

じゃあどうやって、時間に追われていると感じたとき、自分の時間を引き延ばす。そんなことができるのでしょうか。

 

 

テーマ 3 : 職場でつかえるヨガのアイデア

両手を胸の前で合わせてみましょう。

軽くあごをひきます。皆さん、無意識に目をとじてしまった方が多いのではないでしょうか。これがリラックスのスイッチなんです。

本屋さんにいくと、トイレに行きたくなる症候群、というのを聞いたことはないでしょうか。立ち読みをするときに、ついあごをひく姿勢になる、それですね。便秘には繊維も必要ですが、リラックスする神経のスイッチを入れることも必要なんです。

ちょっとテンパってきたな、と思ったら、軽くあごをひく。これをぜひ覚えておいていただければと思います。ヒントは阿弥陀如来像です。すごいですね、昔の仏像の彫師の人は知っていたんですね。

こんな(あごを突き出す)阿弥陀如来はいません。穏やかになれる首の角度を知っていた。

首についてもうひとつ実験をしてみましょう。

首の前の筋を軽く指でほぐします。鎖骨の上下の皮膚も優しくなでるようにゆるめてみます。

今度は、首を誰かに引っ張られるように上に伸ばしていきます。キリンのように上に上に、

さあ、階段を後ろ向きに上るように、首をほんの少し後ろに戻します。ほんの小さな動きです。

もう一度、誰かに首を天井の方に引っ張ってもらいましょう。上に上に。

もう一度、ほんの少し後ろにひきます。あと一回、この小さな動きを繰り返してみましょう。

さあ、体の力を抜いて、隣の方の首の位置をさりげなく見てみましょう。どうですか?ビフォーアフターで比べていないのではっきりとはわからないかもしれませんが、少なくとも皆さん、首が頭の上にきれいに乗っかっていますね。

私たちは、疲れてくるとどうしても猫背になり、その影響で首がハトさんのように突き出してきてしまいます。そうすると、首の骨、実はこれは立派な背骨の一部なのですが、神経が集まっている頸椎は著しい負担に耐え続けることになります。

試しに、姿勢を正し、首の後ろをさわってみましょう。猫のように柔らかいですね。今度は首を前に突き出して、さっきの後ろがどう変わるか、もりもりっと硬くなるのがわかりますか?首をいい位置に戻してあげれば、またさっきの柔らかい猫の首に戻ります。

想像してみてください。もし皆さんの首の後ろが、慢性的にさっきのように盛り上がり緊張しているとしたら。脳には新鮮な酸素は届かず、神経は圧迫され続けます。病気じゃないのに不調から抜け出せない、そんなときは「ハトさん首」を疑ってみてください。なぜなら、頸椎には私たちの快不快を左右する神経がたくさん集まっているからなんです。頭痛、めまい、肩こり、耳鳴り、吐き気、などは首の神経の圧迫によって引き起こされてもおかしくはないのです。

ヨガで、病気そのものを治すことはできません。ヨガでがんや糖尿病は治せないのです。でも、姿勢を正し、呼吸を整えることで、病気にまつわるストレスをずいぶん軽減できることはよく知られています。(3分)

私たちはどうしても調子が悪いときは猫背になり、不安になり、焦り、呼吸も早く浅くなります。体にも無意識に力が入ってしまいます。

試しに今、皆さん握りこぶしをぎゅっと握りしてめて下さい。こぶしから前腕にかけて白くなるのがわかりますか。今、この状態で、この前腕の筋肉はたくさん酸素を消費してしまっています。でも、この腕が酸素を使ってしまったら、本当は酸素を届けたい内臓はどうなってしまうでしょうか。酸素不足の状態になります。

腕や脚の動きは私たちの生活においてもちろん重要です。でも、腕や脚は所詮植民地なんです。私たちの健康を司る本拠地はどこかというと、内臓がおさめられているこの体幹です。こっちに酸素が足りていないと、結局植民地もしっかりおさめられない。だからヨガでは、いかに手足の力は抜いて、体の奥のほうに呼吸を届けていくかを重視するのです。手足の冷えや、座骨神経痛の原因は、末端ではなくこっち(体幹)の方にあることが多いのです。

猫背になってみましょう。この状態ではみなさんの腎臓肝臓は潰れてしまっています。

背筋を伸ばすことで、腎臓と肝臓まわりにスペースが生まれます。

さらに、体を軽くひねってみましょう。ひねることで、血流がいったん遮られますが、そのあと新鮮な血液が体幹に流れ込みます。

今度は、胴体に酸素を送り込んでいきましょう。

一緒にこういう呼吸をしてみましょう。ヨガで「完全呼吸法」と呼ばれる呼吸法です。
ゆっくり息を吸いながら、その息をお腹に入れていきます。お腹がいっぱいになったら今度は残りの息を胸に、胸がいっぱいになったら今度は肩にまで満たすように息を吸い続け、すべての息を体から出していきます。

これを、もう少し効率的に行なう方法を紹介したいと思います。これはオフィスでとてもやりやすいヨガのひとつです。

椅子の背もたれに腕を預けます。あるいは、椅子の背もたれを両手で持ってもいいでしょう。その状態で、さっきと同じように ゆっくり息を吸いながら、その息をお腹に入れていきます。お腹がいっぱいになったら今度は残りの息を胸に、胸がいっぱいになったら今度は肩にまで満たすように息を吸い続け、すべての息を体から出していきます。

どうですか?物理的に胸の前、具体的には鎖骨どうしがほんの少し開くだけで、呼吸がはいってくる量にこれだけ違いがでてくるわけですね。

日中のだるさや疲れは多くが酸素不足によるものです。
午後、気分転換のタイミングで、この背もたれ完全呼吸、試してみていただければと思います。

さて、肩こりです。

肩こりは、肩甲骨まわりの筋肉の血行が悪くなっている状態です。誰か介の字ばりをしてくれる人を探そうにも、職場ではそうも行きません。
さて、みなさん自分の肩甲骨を見たことはありますか?天使の羽のあたりについているということは、聞いたことがありますよね。
今から、自分の肩甲骨を見てみたいと思います。

ぎゅーっと自分のことを両手で抱きしみてみてください。抱きしめたときに手のひらに当たる硬いもの。これなんだと思いますか?そう、実はこれは肩甲骨なんです。皆さん今お洋服を着ているから気づかなかっただけで、実は私たちの肩甲骨って、肩越しに見えるぐらい前まで移動してきているんです。

よくヨガが肩こりにいいと言われるのは、腕の動きが多いから肩甲骨を背中で大陸大移動のように動かすからなんですね。肩甲骨は、背中で私たちの背骨にはくっついていないんです。ではどこでくっついているかというと、烏口突起と言われる、この肩関節の前の部分なんですね。そう、腕の前で体につながっているのが肩甲骨なんです。
試しに、だまされたと思って、片方の腕の前をゆっくりほぐしていってみてください。
私たちの腕の前は、デスクワークやスマートフォンの操作で、日々酷使され、縮んでいます。縮みっぱなしだとどうなるか。肩甲骨は前に引っ張られっぱなしになり、猫背が慢性化します。それを解放するにはどうしたらいいか。腕の前をゆるめてあげたらいいんですね。自分の腕、普段はお疲れさまと声をかけてあげることもないと思います。いたわりながらゆるめてあげてみてください。試しに今は片方だけで比べてみましょう。

ほぐし終わったら、左右の肩甲骨の滑りを比べてみましょう。
どうでしょうか。誰も介の字貼りをしてくれていないのに、腕の前をもんだ方は肩甲骨がよく動きませんか?これからは、肩が凝ったら肩をもんでくれる人を捜すのではなく、自分で腕の前をほぐす、これを覚えておきましょう。

夕方の腰の疲れ、これも軽くできたらいいですね。

実は、腰の疲れには足首と膝の柔軟性が大きくかかわっていることをご存知でしょうか。
ヨガのイメージは、股関節が180度開くような柔軟性と思われがちですが、柔らかければいいというものではないのです。股関節の柔らかさより、私たちの生活の上でむしろ問題になるのは足首と膝の柔軟性です。これも、柔らかいことが大切なのではありません。硬すぎることが問題になるのです。

もし、私たちの足首と膝が著しく硬ければ、私たちはこういう歩き方をせざるを得ません。これでは、地面からの衝撃はすべて腰で受け止めなくてはならないのです。もし、ここで足首と膝にある程度の柔軟性があれば、地面からの衝撃をある程度は吸収できます。日中立っていることが多い方は、毎日ヨガをすることまで行かなくても、出勤前にちょっと足首をまわし、膝のうらをもんでおくだけで、夕方の腰の疲れ方に差が出てきます。
ぜひ試してみてください。

最後に、睡眠障害のお話をしたいと思います。

睡眠障害にもいろいろな原因がありますが、ヨガの考え方から一番気をつけていただきたいのは、目を通じた脳への刺激過多です。具体的にはどういうことかというと、

どんなに昼間、ヨガ教室に通い、ヘルシーなカフェご飯を食べて、スムージーを飲んだとしても、夜、日が暮れてから「今日はこんなの飲んじゃった♡」と明かりを消した部屋の中でパソコンやスマートフォンの画面に向き合い写真をブログにアップしちゃう、というような行為です。お昼なヘルシーな生活を帳消しにしてあまりあるほどのデメリットがここに潜んでいます。

パソコンやテレビ、スマートフォンなしでは私たちはもはや生活はできません。でも、何が私たちの睡眠リズムに致命的かというと、暗闇の中で見つめる画面のブルーライトの刺激なのです。目の神経は非常に脳に近いところにあります。そして、ブルーライトの刺激は脳に光の残像としてとても強く残る、ということを覚えておいてください。日中、明るい部屋の中で見つめる画面であればまだいいのですが、夜、それも体内時計が「さあ眠ろう」というモードにさしかかっているとき、この光の刺激は私たちの脳につきつけてくるものは「寝させないわよ」という挑戦状なのです。

実際に脳波を計ってみると、恐ろしいことに体は寝ているのに、脳だけ夜中に何度も覚醒している様子がグラフにはっきりとあらわれます。そして、そのような睡眠で目覚めた朝、被験者の方々は口を揃えてこういいます。「寝た気がしなかった」

もし、私たちが夜寝る前にみるスマートフォンで、体ごと起こされるのであればさすがに私たちも反省し、見るのを控えることでしょう。でも、非常にトリッキーなのは、起こされるのは脳だけなのです。なので私たちはまさか浅い眠りの原因が夜寝る前に見たYou Tube とは想像だにしません。だからやめられないのです。

でも、もし睡眠障害をなんとかしたい、と思われている方が今日いらっしゃいましたら、だまされたと思って夜8時以降に暗い部屋で見る画面の回数を控えてみてください。

ヨガの基本にある考え方は、バランスです。

私たちを取り巻く環境とのバランス、調和もそのひとつです。私たちが暮らしているこの社会はどうしても目や耳への刺激がオーバーフローになります。もっといえば、特に目への刺激は、私たちの脳が処理できる容量をすでに超えてしまっているともいわれています。私たちの脳は、過労死寸前なのです。

逆に、嗅覚はどうでしょうか。昔に比べ、私たちは香りに意識を向ける機会は少なくなっています。本能がつかわれなくなってきているのです。

使われすぎている五感にはバカンスをあげ、出番の少ない五感には活躍の機会を与えてあげる、これもヨガの考え方のひとつです。目を休めてあげる。いい香をかがせてあげる。
私たちが自分にしてあげられる、自分を大切にする行為です。

ヨガとは、突き詰めていけば「命への感謝、思いやり」です。自分を、目から、鼻から、体の間取り、つまり姿勢から、大事にしていってあげていただきたいと思います。

今日は、職場で簡単にできるヨガをご紹介しました。

 

復習してみましょう。

 

まず、テンパったら胸の前で手を合わせ、軽くあごをひいてみます。阿弥陀如来の角度を思い出しましょう。

仕事中にだるさを感じたら、椅子の背もたれに腕をかけ、体の前側を開き深呼吸してみましょう。

なんだか心と身体に毒がたまっている気がする、と思ったら、息を吐きながら体をゆっくりひねってみましょう。

頭痛やめまいがしたり、考え方が卑屈になったり、攻撃的になっている、と感じたときは鏡に映る自分の首をチェックしてみましょう。もしハトさんのように前に突き出ていたら、階段を後ろに登るように首の位置を元に戻してあげましょう。

肩が凝ったら、腕の前をほぐしてあげましょう。

そして、夕方の腰の痛みを少しでも楽にするために、始業前に足首と膝をもんだりまわしたりしておいてあげましょう。

睡眠の質を下げないためには、夜暗い部屋の中でスマートフォンやパソコン、テレビの画面を見ることは危険だということを知っておきましょう。

以上が今日のお話となります。

健康に気を使うには、ちょっとしたことが大切とはいわれますが、そのちょっとしたことを続けるのが実は一番大変です。

そんなときはヨガのおおもとにある教え「大切にしよう、大切にしてあげるといいことがある」を思い出していただければと思います。

毎日ちょっとずつ、自分に気をかけてあげる、そうすることで皆さんの中にある美しさがしっかりフィードバックしてくれるのではないかな、と思います。

ヨガがみなさまの生活の中で、少しもお役に立つようですと嬉しいです。

本日はご清聴ありがとうございました。


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