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クリーブランドクリニックにおけるメディカルヨガ視察レポート2015

【病院がヨガセラピストをフルタイムで雇用】

クリーブランドクリニックは、ANA(アメリカ看護協会)が認定しているマグネットホスピタル(魅力的な病院)として、また、U.S. News & World Report の “アメリカのベストホスピタル” ランキングで、心臓部門が全米病院ランキング第一位を含め、常に米国のベストホスピタルのひとつとして挙げられています。
ヨガを病院の健康プランとして正式に採用しました。アメリカ人にとってヨガは健康を支える趣味の一つとして定着してきています。クリーブランドクリニックでは、米国で初めてフルタイムのヨガセラピストを採用しました。

【ヨガクラスを開催する病院が増えているアメリカ】

全米では他にも テキサス州の MD アンダーソンはがん患者さん向けに年間52回もクラスを開催しています。コロラド州の子供クリニックでは毎月60クラス(患者さん向け40クラス、従業員向け20クラス)ニューヨーク州にある病院の小児病棟ではパートタイムのヨガセラピストによって、介護する人向けや病床でのセッションも含め、20クラスが行われています。

最近は医療現場でも「健康感をアップするもの」なら何でも、例えばマッサージや鍼灸などを治療計画に導入する補完代替医療が治療の支流になりつつあるという記事をよく目にします。
クリーブランドクリニックでも、予約制のカウンセリングルームや鍼灸ルームなどがあり、ヨガも人気の高まりから、広い会議室二つを改装してYoga Roomというものが正式にできました。
そこには、像の置物(ガネーシャ)もマントラも祭壇もありません。宗教的な理由で抵抗を感じることがないようにするためです。先生は決してサンスクリット語を使いません。

こちらがクリーブランドクリニックのヨガのサイトになります。
http://portals.clevelandclinic.org/wellness/Programs/Yoga/tabid/7606/Default.aspx

【患者さんを怖がらせないために】

キャッチコピーが貼ってあります

体がかたくても大丈夫
着替えなくても大丈夫
椅子につかまって、あるいは座って、
家でも治療の現場でも
筋肉の緊張をとき、姿勢、バランス感覚を向上させることで、深い呼吸ができるようになれば、ストレスも減っていくことでしょう

ヨガを健康に役立てましょう、という無料のレクチャーもあります。無料ですが予約は必要です。

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クリーブランドクリニックでは慢性病患者向けに Yoga 180 という、ヨガで人生を変えていこうというプログラムがあります。
8回のプログラムで、費用は200ドル(約24000円)コストは教材費のみということになっています。

看護師、医師が同席する会議室には、糖尿病の治療を続ける患者さんが4名、遠くは西海岸からいらしてました。Judi のクラスは普段着で始まりました。

お医者さんに奨められたからと言って、街のヨガ教室の扉をたたける人がどれだけいるでしょうか。でも、こうやって病院の会議室で体験するなら、やってみようという気になるかも知れません。

今回私を招いてくれた、ヨガセラピストの友人ジュディ(Judi)の説明が始まります。彼女はヨガウェアではなく、シンプルなセーターにスリットの入ったスタイルのよいスカート。蓮の花も、ヨガっぽさもまったくありません。普通の病院勤務の女性に見えます。

今日行うヨガのクラスでは、Being Mindfullness だけで十分。
自分が今ここにいることに意識を向けるだけで大丈夫です。

私もこの通り普段着です。普段着でも十分ヨガができることを知ってほしいし、簡単な動きでも、科学的には脳や筋肉をリラックスさせることはもう十分に証明できます。
心や体は、リラックスすることでホメオスタシス(元気になろうとする力)が働きます。

(1)椅子に座って、猫背、背筋を正す、の比較
胃がまっすぐになるだけで消化の力は変わりますよ!

(2)首の前のマッサージ  烏口突起がどこにあるかの確認

(3)椅子に座ったまま足踏み 小さく トトトト つま先、踵、足の裏全部
エネルギーの高まりを感じる  頭寒足熱の説明

(4)椅子に座って、手を振る、足を振る、目を閉じる
体に何を感じるか 鼻呼吸をしてみる 口呼吸をしてみる

(5)鎖骨に手を当てて、腕を外廻し、内回し、大げさに

(6)あーっと息を吐ききる

(7)今、自分の体で感じていること 言葉にしてみましょう

(8)首回し

(9)椅子を使ったキャメル そして腕に余裕をもたせ 体を揺らして、吸って、吐いて

(10)椅子を使ったひねり

(11)体を前に出してリラックス

(12)椅子の後ろに立って、つかまって、つま先、かかと、エネルギー

(13)股関節から前屈

(14)椅子につかまらないでつま先立ち(木のポーズより簡単なバランス)安全と感じる限り片脚でもいい

(15)椅子につかまって片足バランス

(16)椅子につかまって脇のばし

(17)頭のうしろで手を組んで、頭を少し反らして呼吸(それもバランス)

(18)立ったまま骨盤回し ☆マインドフルネスとはからだを動かしながら呼吸をする意識を持つだけでOKですよ〜

(19)椅子を使った犬

(20)手を頭の上に挙げて深呼吸

(21)Final Meditation

終わったあと、アメリカ人は「これはできる」「できない」など、自分の意見を言いますが、もしかしたら日本人は「いわれたことをやる」だけで黙ってしまうかもしれません。

プライベートセッションでは、動きやすいパンツに着替え、ヨガマット2本とブランケットを持って会議室へ

IMG_0782

【肝移植後の入院患者さん向けヨガクラス】

患者さん2名、付き添い1名の参加に、ヨガセラピスト2名
椅子やいろいろなものがある 面談室をヨガセッションに使っています。
疲れないように背中にクッションを入れます。

呼吸にあわせて旅をしていくだけ、という誘導で、ゆっくりした呼吸をしていきます。
お腹をふくらませたり、凹ませたりしながら、吐く息を少し長く、それだけでリラックスしてエネルギーが満ちてくるようよ、と一人の方がいいます。

もう一人は昔はヨガに通っていたんだけどね、今はこうなっちゃったからもう無理と思っていたけど、病院でこうやってできるとずいぶん気分が変わるわ、とおっしゃっていました。

でも、10分も立たないうちに「少し疲れたわ」と言い出しました。すると、連絡をとった医療スタッフがすぐ飛んできて、ベッドに戻ります。

担当インストラクター、日時、ヨガの前のストレスレベル、ヨガの後のストレスレベル、前後の痛みレベル、前後の不安レベル、を、問診して書き込むインタビュー用紙も用意してあります。臨床データではないかもしれませんが、人それぞれヨガが何をもたらしてくれたかのヒントがその用紙にはつまっています。ヨガの効果の「見える化」です。

クリーブランドクリニックではベッドサイドヒーリングサービスというのもあります。起き上がれない人でも希望を聴いて音楽やレイキ、呼吸の誘導などを提供してもらえます。

【最上階でパワーヨガに汗を流す病院スタッフ】

病院の中で一番いい場所、クリーブランドの街が一望できるルーフトップのサロンはすべての人に解放されています。とてもいい景色ですが、もちろん入場料もありません。そこの一角、もちろん景色がとてもいい場所で、従業員の方がタンクトップの男性のインストラクターのもと、エネルギッシュに戦士のポーズ3番をとっていました。ブロックなどの補助具も用意されています。

おぉ、病院ヨガで戦士のポーズをみることがありうるとは、と驚いていると、このクラスは有料クラスだけど福利厚生の一環として従業員の負担は5ドルのみです。いい景色を見ながらかなりハイレベルなストレスリリースです。ちゃんとスペースの片隅に、ヨガマットやブロックを入れる可動式のキャビネットまで用意されています。これは些細なことと思われるかもしれませんが、教える側にとってはとてもありがたいことです。従業員の方々にとっても、働き詰めでスポーツジムに行く時間がない中、こうやって思いきりからだを動かせる環境を会社が提供してくれていることはコーヒーの提供以上に大変有難いことなのだそうです。

【問題は、いつだって同じ「誰がそれにお金を出すのか」】

しかし、病院にヨガを導入するのにJudiも10年かかったということです。いつだって問題は「誰がそれにお金を出すのか」ということなそうです。それはきっと日本でも同じです。

【プロフェッショナルがチームを組んで】

慢性疼痛患者さん向けのドクターとサイコセラピストの合同セッション
テーマは「痛み止めを減らしていこう」

薬が売れないと困るのはアメリカの医療業界も同じでありながら、勇気を以てこのような患者さんに寄り添うプロジェクトを始めたことは、アメリカでも画期的なことなのです。日本でもどの病院がいち早くこのようなことを始めるかが楽しみです。半導体の仕事をしていたときもそうでしたが、日本の組織は「一番にやろう」という早期参入利益を狙うよりは「前例はあるのか」「前例でうまくいったのをみてから、勝負をかけよう」というところがほとんどです。でも、少し時代も変わってきています。時代を読んで一番にやろうというところが出てくるのではないかと思っていますし、クリーブランドクリニックのように、まず前例を作らなくてはならないとも思っています。もう少ししたら発表しますが、病院の一角を借りてメディカルヨガプロジェクトを始めていけることになりそうです。大成功できるかはわかりませんが、日本でもやっているところがある、ということを参考にしていただき、うちの病院でもやってみようじゃないか。患者さんにも従業員にも良さそうじゃないか。と食指を動かしてくれる病院が出てきてくれるのではないかと思っています。

慢性疼痛患者さん向けのセッションでは、食べ物が痛みを引き起こしている可能性もある、ということで、栄養士さんから栄養のアドバイス(今アメリカではオメガ3がブームです)そして、お医者さんからも『食べ物はヘルシーな薬です」との応援発言があり、お医者さんがそういうのなら、と皆真剣に耳を傾けていました。「お医者さんがいうのだから」これはアメリカでも日本でも、患者さんの心理として確実にあります。

また、レイキについての紹介もありました。
エビデンスはあるのかということ以前に「手を温めて患部にあて、痛みが和らいでいく気がする」ということを科学的に証明できるのだろうか、できなくても患者さんにとってそれが救いになるのなら、試してみる価値はあるのではないか、という医師からの発言。「私たちはカリフラワーの栄養価の裏付けをとってカリフラワーを子供の健康のために食べさせようとしているだろうか。そんなことより、美味しいし栄養があるから食べなさい、というだけで十分子供の栄養になっていることでしょう。同じように、ヨガやマッサージで筋肉の緊張をとることも、そこに科学的な証明があるかどうかよりも、筋肉が緊張しているよりは、緩んでいる方がずっと快適だし幸せだ、それは確かなのではないか。そして、みんなで胸に手をあてて、息を吐いて、穏やかな時間を共有しました。やはり宗教的なバイヤスを避けるために合掌はしません。手を重ねて胸の前にあてる、それだけで意識がそこにいくものです。

結局そのセッションは「栄養」「動き(ヨガによる)」「マインドフルネス(リラックス)(レイキによる)」のアイデアを集結したものでした。

栄養とレイキの話がおわったところで、みんなでヨガルーム(広い会議室)に移動です。
Judiからは患者さんにこんな話がありました。

「私たちの筋肉は頑張ろうとしたり緊張したりすると、筋肉が喧嘩して痛みを増幅します。少しでも痛みを感じたら、動きを止め力を抜く練習をしましょう。力を抜く薬は病院では処方できませんし、きっと誰も教えてくれなかったことでしょう。だから、これからここで練習していきましょう。」

そんな中、一人のスタッフが私を呼びにきてくれました。患者さんもいるので、娘と息子を秘書の女性にお願いしていたのですが、ついに娘が泣き止まず、Judiの部屋に戻ったら、白衣を着た先生がガラガラを持って娘を抱っこして、隣の部屋の女性やら数名のスタッフがみんなで息子とともに赤ちゃん一人にわいわいやっている光景が忘れられません。申し訳ないと思う反面、チームで子供をみてくださって、本当にありがたいことで助かりました、という本音もありました。その医師は先週3人目の赤ちゃんが生まれたばかりで、赤ちゃん抱っこには慣れていたとのことでしたが、白衣を着たお医者さんがガラガラを持って女性に囲まれて赤ちゃんをあやしているなんて、映画の中でさえ想像できません。

この例がそれには当てはまりませんが、ここのクリニックではプロフェッショナルがチームを組んで患者さんのサポートにあたります。例えば慢性疼痛も、医師だけでなく、栄養士さんや心理療法士、鍼灸師が同席。摂食障害のセッションでは、ソーシャルワーカーが同席、というように、病状をマルチレイヤーな問題ととらえ、それぞれの専門家の力を借りるのです。そこに ヨガセラピストも正式に仲間入りを認められたのは、ひとえにJudiの熱意とプレゼンテーションの成果といえるでしょう。

【慢性疼痛の患者さん向けクラス】

椅子に座って、息を吸って手をあげる、息を吐いて手を下げる
腕をぶらりと下げて、血流を感じましょう
足を開いて、片手をぶらりと下げ、ぶらぶらと廻します。かすかな血流を感じてみます。腕の付け根にスペースが生まれるのを感じて。
肩をすくめ、後ろにひいて、まわします。肩周りにスペースが生まれていくのを感じて。
足を開いたまま、首を廻します。
あーっと息を吐いて、脱力します
足を開いたまま椅子の背もたれを持って、体の前面を開きます。腕の高さは問題ありません。自分が開いているのを感じることが大切です。
足を開いたまま、椅子を使った前屈
足を開いたまま、ひじをももに乗せ、体を左右に揺する(イチロー式股割り)
足を開いたり閉じたり
足を閉じた状態から片脚を上げ下げ、腹筋。おへそをみて腹筋。
椅子に座ったまま足踏み
自分を観察してみましょう:クラスが始まる前と何が変わった?

【とても短い従業員向けクラス:業務の間にやってきて参加】

(1)手首、足首をクネクネ
(2)謙虚な戦士のポーズ1番
(3)呼吸にあわせ腕を上げたり下げたりしながらの前屈と軽い反らし
(4)あおむけになり、両手を胸に、今日も神様に生かされた恵みを確認する時間

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4歳の息子と4ヶ月の娘を連れての視察旅行、じつはシカゴの入国審査でつかまったあげく、セキュリティでiPhoneをなくしてしまい・・写真がほとんど撮れませんでした。ごめんなさい・・・
これだけは、と思い、病院の中にある「ヨガルームはこちら」の看板の前で写真をとってもらいました。


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