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補完的健康アプローチにヨガも名を連ねる時代

結婚相手のことをベターハーフと呼ぶように、親友は時に自分にが必要としているアドバイスをくれる自らの良き伴侶だと感じる。
米国でヨガが医療の現場に浸透を始めており、日本でも同様の環境を構築していくつもりだと話したら、そのことをヨガをしたことのない人でもわかるように説明したサイトはないのかとの質問が帰ってきた。それがあればこれまでヨガと無縁だった業界に、可能性を伝えていくことができるかもしれない。
普通の人にわかるように、というのは素朴な言葉で、という意味ではないかもしれないが、まずはまとめてみた。

「補完代替医療はもう古い?!これからは「補完的健康アプローチ」へ

私がヨガを勉強したアメリカには、NCCIH ( National Center for Complementary and Integrative Health ) と呼ばれる国立補完統合衛生センターがあります。これは現代医学、西洋医学にはない新たな予防法・治療法を学術的に研究し、検証していく国のリソースです。実はこのセンター、設立当時は国立衛生研究所の代替医療局でした。研究には軍事防衛予算に匹敵するほどの莫大な研究費が投じられてきたものの、臨床試験のほとんどはおもわしい結果ではなく、税金の無駄遣いとして厳しい批判を受けました。そこで、2010年ごろから研究目的を「代替医療」から、通常の医療を補う「補完医療にシフトし、新たな予防法、治療法の総称に「補完代替医療」ではなく「補完的健康アプローチ」を用いるようになりました。研究の目的が「病気の予防、治療」から「症状のマネジメント」に変化したのです。そして、そのマネジメントという観点からの有効性が、パイロットスタディによって科学的に証明され始めています。

「20世紀はPT (フィジカルセラピー)の時代、21世紀はライフスタイルマネジメントの時代」

現在、アメリカの200以上の大学でフィジカルセラピーが教えられています。なぜでしょうか。需要と供給です。経済です。
20世紀は、ポリオ、戦争、人工関節、慢性腰痛などが社会問題でした。しかし21世紀、心臓疾患、がん、糖尿病、心肺系疾患で3800万人の人が亡くなっており、これは全体の死亡数の82%にものぼります。1750万人が心臓疾患、820万人ががん、400万人が糖尿病、150万人が心肺系疾患です。この事態を受け、WHOの2015年の議定書は

  • リスクファクターの洗い出し
  • ライフスタイルの向上
  • 予防と啓蒙                              が必要であるとし、これらへの最善の介入策を模索していく必要があると発表しています。

20世紀、社会にはフィジカルセラピーの資格が生まれました。200時間、600時間、そして今となっては大学の単位となっています。それを追うように、ヨガセラピーの分野においても、200時間、600時間、そしてアメリカでは大学の学部が作られ始めています。ヨガセラピストをはじめとした、ライフスタイルマネジメントエキスパートという新しい活躍の場が開かれているのです。

「メンタルヘルス対策に取り組む企業」

2015年12月、メンタルヘルス対策の充実・強化等を目的として、従業員数50人以上の全ての事業場にストレスチェックの実施を義務付ける「労働安全衛生法の一部を改正する法律(通称:ストレスチェック義務化)」が施行されます。これに先立ち、多くの企業が対策を始めていますが、残念なことに実質的なサポートを提供できている企業の例はあまり多くありません。必要性は具現化しているものの、具体的な方法論が確立されていないことが原因の一つと思われます。

「アップルも目を光らせる医療保険分野」

ヘルスケア産業にヘルスとケアが欠落している、という皮肉な現状を乗り越える動きも見えてきています。

NYを拠点としたOscar Insuranceは、大規模な保険会社ではないが、契約者向けに健康トラッキング端末プランを提供し、注目をあびています。その内容は、本人の健康状態に合わせたゴール(歩数)が設定され、それを達成できると毎日1ドルの小遣いが付与されるというもの。米国で深刻な肥満や生活習慣病対策として、既に1万7000人以上が利用しています。その他、アプリを使った医師との連絡機能などもあり、利用者に寄り添う独自の戦略が光ります。
https://www.hioscar.com/experience/

日本でもアクサ生命のように、保険会社自らが健康アプリの提供により、利用者の健康に伴走する流れも見え始めています。
http://www.borntoprotect.jp/actions/diabetescheck/

また、アップルも米国のヘルスケア業者や健康関連アプリの開発者、医療保険会社との連携を2014年より積極的に始めています。
実際、アップルのメディカル関連のアプリは200種を超え、さらに、ヘルスフィットネス関連、ライフスタイル関連もそれに匹敵しています。
時代の流れとしてこれら3つは統合される方向に向かっていることは明らかです。

「米国にけるヨガという補完療法(ヨガセラピー)の存在感」

国連は6月21日を国際ヨガデーに制定し、ヨガが人類の幸福と心身の健康に貢献することが、社会的にも認知されつつあります。
米国では空港の中にヨガルームが作られ、オバマ大統領の健康プログラムにも採用されています。
ヨガの経済効果は7000億円規模といわれており、2012年にヨガアライアンスが行った調査では、全米ではもはや2千万人がヨガを行い、自分もやってみようと思っている人の数は1億人を超えると言われています。
上述の米国人が採用している補完代替療法の上位を呼吸、瞑想、ヨガ、リラクゼーションが占めています。

「増え続ける臨床研究」

ヨガが単なるスピリチュアリティを超えて心と体に有効でありそうだということは、経験したことがある人にとっては想像がつくことと思われますが、公の、すなわち医療現場や教育の場に導入されていくためには科学的なエビデンスが要求されます。そのため、「ヨガは心と体に良い」という、すでにわかりきってそうなことの裏付けをとるべく臨床研究が行われています。99年から04年にかけて発表された研究数は3倍に増え、さらに04年から09年にかけての5年間でさらに3.5倍となっています。つまり、約10年間で10倍近い研究が年間発表されてきているのです。
各研究機関や論文集に掲載されてきているものだけでなく、国際セラピスト協会ではそれをライブラリとして蓄積しています。
http://iayt.fmdrl.org

補完的健康アプローチという点では、脳や神経の機能不全に起因する症状(精神疾患をはじめ、疾病に伴う不定愁訴を含む)や、高齢化社会におけるメタボリックシンドロームや骨粗しょう症など、運動療法を必要とされる分野、また、NCD(Non Communication Desease )  といわれる非感染性疾患(がんや糖尿病、心臓病など)分野での活用への期待が高まっています。

「薬にできないこと」にはこのようなものがあり、ヨガが得意とするところです。

  • 姿勢の改善
  • バランス
  • 可動域の向上
  • 機能強化
  • 調和
  • 不安の低減

 

「日本全国に足跡が増え始めています」

日本でもヨガを治療計画の一環として活用できるような社会の実現に向け、医師、メディア、ヨガセラピストがそれそれの力を合わせ、私たちは小さな一歩から歩み始めています。

医師や看護師の方々にヨガの良さを知ってもらう勉強会を始めています。乳がん学会でもセラピーとしてのヨガを紹介できる機会に恵まれました。
米国が国を挙げておこなっている補完的健康アプローチが民間レベルでどのような普及をはじめているのか、米国のヨガセラピー学会への視察ツアーも計画しています(2016年6月)
乳がん患者会でのヨガクラスや、ネットワーキングを始めています(がんくらす向上委員会)
公立中学校の教師の自殺、離職を防ぐためにヨガができることについて講演依頼をいただきました。
従業員の福利厚生としてのオフィスヨガや、介護施設、老健などでのヨガ、障害者の方向けのヨガクラスなども全国的に広まりつつあります。
高齢者向け、不妊治療のグリーフケア、更年期障害、子供の心身の健康の発達のためのヨガを教える先生も増えてきています。

ヨガはお金のかからない、そして息さえできればできない人がいないセルフケアの手法のひとつです。

ヨガとは「つながる、結ぶ」と言う意味です。私たちがありのままの自分と向き合う時間を通じ、自己肯定感を取り戻すことができます。独りよがりの考え方を改める余裕をとりもどすことで、私たちが様々なつながりの中生きていることを思い出させてくれ、自然や命に立ちする謙虚さを取り戻すのを助けてくれます。

それらは、ゆっくりと深い呼吸や、体に意識を向けた動きの副産物かもしれません。しかし、ストレスの多い現代を生きる私たちにとって、必要としている人が少なくない処方箋です。

ヨガセラピーという選択肢を人々に知っていただくため、科学的に証明された事例や、初心者でもわかりやすい方法論の確立、ヨガに対する先入観の払拭に努め、これからも社会への普及にとりくんでいきます。

また、ヨガを支援することが企業に取っても多くのメリットとなるような実証事例を一つ一つ構築しながら、製薬会社や保険会社の賛同を得られるような活動の流れを作っていこうと思っています。

繰り返しになりますが、21世紀はライフスタイル、ヘルスフィットネス、メディカルが統合されていく時代です。ヨガとのタイアップで、メリットを得られる潜在的需要は掘り起こせると信じています。

 


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