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2016 With You Kyushu でヨガというブレストケアのご紹介

講演タイトル:呼吸の波に揺れながら〜ヨガで急がず休まず

こんにちは、ご紹介に預かりました、岡部朋子と申します。

アメリカの国立医学図書館が編纂するPub Med(パブメド) と言われる医学論文データベースで、ヨガ、を検索すると、3322もの論文がヒットします。ヨガとがん、と入れて検索すると、284、ヨガと乳がん、と入れると130もの論文が正式に提出されていることがわかります。

実際この中の全てが信頼に値する研究ということはできないかもしれません。それでも、アメリカでは20年ほど前から、国の予算をかけ、東洋医学やヨガの臨床研究に取り組んできました。実はここ数年で、国の研究体制に大きな流れの変化があったことをお話しさせていただければと思います。

実は、予防や治療の臨床試験のほとんどが、期待を上回るものではありませんでした。もちろん国民からは税金の無駄遣いだ、という声が上がりました。それを受け、2010年頃より、研究の対象が「補完代替医療」という呼び方ではなく、補完的健康アプローチに、そして予防、治療から、症状のマネジメントに様々なセラピーを活用していこうという動きに整理され、その有効性が徐々に明らかになっている段階です。
そして、現在非常に人気が高まっているのは最新鋭の医療技術と伝統的な心身ケアのいいとこ取りをした統合的治療マネジメントです。

本日は、そのような伝統的ケアのひとつとして患者さんたちの間で活用が始まっている「ヨガ」で体を動かす気持ち良さ、そして心や体の変化について、お話しさせていただければと思っております。難しいポーズは一切しませんので、どうか安心して取り組んでみていただければと思います。

実際に体を動かしていただくとわかることなのですが、難しいポーズに高い効果があるわけではありません。むしろその逆で、ヨガはローテクです。

さっそく、このようなポーズをしてみましょう。

ポーズ1

まずはじめに、自分の心臓を包み込むように、胸骨の中心付近で手を重ねてみます。
鼻からゆっくり息を吐きながら、少し表情をにっこりさせて、手を下に下ろしてみましょう。
どうですか?気持ちがなんとなく、落ち着くのではないでしょうか。世界で一番簡単なヨガのポーズですが効き目は抜群です。私の息子は5歳になりますが、私がプリプリ怒っていたり、焦っていたりするとトコトコトコ、とやってきて、ママ!これ!と、この仕草をします。つまり、4歳ぐらいの子供にもできるリラックス方法を、私たち大の大人はともすれば日頃忘れてしまい、それストレスだ、パニックだ、眠れない、と大慌てしているわけです。

では、もう一度、心を落ち着けてみましょう。

ヨガというと長い歴史があり、ミステリアスなイメージがあるかもしれませんが、確かにインド由来のものなので、エキゾチックであることは確かです。だけど、今やアメリカをはじめ、全世界で趣味や健康管理として取り組む人が急増しています。それだけ、根底に流れるメッセージが普遍的だということですが、そのメッセージはどんなものかというと、「仲良くしましょう」ということです。別な言い方をすれば「戦争反対、喧嘩反対」さらに展開すれば「あなたは一人ぼっちじゃない、みんなが付いている、世の中みんな持ちつ持たれず、お互い様で、喧嘩両成敗」ということです。実際、ヨガの語源は「結ぶ、つなぐ」という意味で、ご縁や絆、感謝や思いやりを大切にしましょう、ということなのですが、私たちは時にしんどい時、そのことを思い出せなくなることがないでしょうか。あるいは頭ではわかっているけど、気持ちがいっぱいいっぱいだと、そんな余裕を持てない、ということもあると思います。

そんなときは、こんなポーズに取り組んでみましょう。

ポーズ2

背骨をしなやかにして、心を開くポーズです。
自分のことをぎゅーっと抱きしめて、お腹を覗きながら息を吐いてみましょう。体の中の全ての息を吐き切ったら、今度は自然に吸う息に任せます。息を吸いながら大きく手を開いて、体の前を開いていきましょう。これを呼吸に合わせて繰り返していきますが、こんどは意識を腰骨に向けてみましょう。腰骨を前後にコロンコロンと転がすのに背骨がついていく感じです。吸って転がして、手を大きく開いて、履いて転がして背中を丸め自分を抱きしめて。では最後にこれに、気持ちをつけてみましょう。自分を抱きしめながら、自分にありがとう。自分は頑張っている、褒めてあげましょう。こんどは、両手を開きながら、みんなにありがとう、いろんな人の助けを思い出して、実際、私たちはそのような思いを交錯させながら、社会で生活しています。自尊心を大切に、だけどそれだけではなく、みんな支え合って生きている。だけど、ふとした瞬間にそのことがスポッと抜け落ちてしまうことがあり、自分は孤独だ、とか自分だけが頑張っている、と思ってしまうこともあります。そんなときは、体を動かしてみればいいのです。もう一度一緒にやってみましょう。自分にありがとう、みんなにありがとう。体の動きを呼吸に乗せていくと、自然な波が蘇ってきます。

やってみて感じられたかと思いますが、呼吸に滑らかなカーブを描くようになると、気持ちも落ち着いてきます。これは科学的にも証明されていることで、呼吸が浅くて早いときは私たちの気持ちは焦り、煽られ、緊張します。反対に、呼吸が深くゆっくり行えているときは、周りがよく見え、寛容になれ、リラクスできます。だけど、この呼吸は心や体の影響を受けやすく、不安や疲れによってますます呼吸筋が硬くなり、呼吸が浅くなってしまいます。そんなときは、こんな動きを取り入れてみましょう。

ポーズ3

まず、肋骨と、腰骨の間をプニプニと触ってみましょう。ここの距離が短いと、私たちは呼吸が浅くなると言われています。それだけではなく、ここの距離が短いと、血の巡りが悪くなり、肝臓や腎臓、内臓に新鮮な酸素が届きにくくなるとも言われています。試しに、アメリカでマフィントップと呼ばれている実験をしてみましょう。思い切り猫背になってみましょう。はい、お肉がモリモリっと乗りますね。アメリカ人はこれを、カップケーキからはみ出した一番美味しいところ、マフィントップと呼びます。ずいぶんな言い方だな、と私も思いましたが、女性にとっては悩ましいものだと思います。実はこれは、隠すことができるんです。肋骨と骨盤の距離を広く保つようにすることです。では早速、片方の手で椅子の端をしっかり持って、片方の手は背中に添えます。息を吐きながらこのプニプニをできるだけ伸ばし、空間を作るつもりで脇を伸ばします。
吸って準備し、吐いて伸ばします。反対側も同様に。
どうでしょうか。脇腹の風通しが良くなりましたでしょうか。

ヨガの特徴は、道具が入らないということです。今使ったのも、自分の体の重みだけです。自分の体を支える筋力、これを骨格筋と呼びますが、これさえあれば、生活が不便になるのを防ぐことができます。

乳がんの手術をされた方から多く寄せられる声として、リンパ浮腫への不安と、腕の可動域の回復があります。リハビリで腕を高く上げるプログラムはあるけど、メモリで行うと今日はできた、今日はできないと一喜一憂してしまう、と。ならば、ヨガでこんな動きを試してみましょう。

ポーズ 4

両方の肘を曲げ、顔の前で合わせます。
ここで大切なのは、自分が今日、閉じれるところから、開けるところまで動かせばいい、ということです。スタートとゴールは人に決められるのではなく、自分の体と相談して決める。これがエクササイズとヨガの違いです。Just for Today, つまり今日できるところで楽しもう、という考え方です。今日は今日できるところで気持ち良く、明日は明日できるところで気持ち良く。では、実際にやってみましょう。吐いて閉じて、吸って開きます。吐いて閉じて、吸って開いて、少しにっこり。慣れてきたら、鼻で呼吸するようにしましょう。

ポーズ 5

今度はこれを、上下に展開してみましょう。
スタートとゴールが自由というのは同じです。
上げて下ろして、肩甲骨を引き寄せます。
実はこれは、2つの観点からリンパ浮腫の予防にとても大切です。
皆様の先生はこんなことを言わないでしょうか。
リンパ浮腫にならないために、重すぎるものは持たないように、だけど全く筋肉がないのもリンパ浮腫には良くない、と。一体どうすればいいの?と。それにはこの運動はとてもオススメです。腕の重みだけをつかった骨格筋の筋トレです。しかも肩甲骨の動きをよくするので、巡りが良くなり、肩こりの予防にもなります。
肩甲骨の位置は姿勢にも影響し、姿勢は全身のリンパの回りにも影響します。
また、手を心臓より高く上げることは、重力を利用したリンパフローの向上にもつながります。

さて、少し腕が動いてきたところで社会復帰のことを考えてみましょう。
自分がこれからやりたいこと、一歩前に進みたい時、足を一歩前に踏み出す力はどこから湧いてくると思いますか?それはおへその奥の丹田です。だけどこの丹田、不思議な特徴があります。もう一度猫背になって、おへその奥に意識を向けてみましょう。入らないんですね。今度は、背筋を伸ばして同じことをしてみます。意識が確かに向かうのです。つまり、前に進む一歩を踏み出すにはまず、体の前側をしっかり開きたいのです。

ポーズ6

椅子に座ったまま、弓をひく仕草をしてみましょう。
これも吸う吐くにあわせてペースが取りやすいポーズです。吸って構えて、履いて弓をひいて、慣れてきたら体を少しひねりながら、いろんな方向に矢を構えてみましょう。体を捻ることで内臓に新鮮な酸素と血液を送り込むポーズでもあります。

ポーズ 7

それから、社会復帰のためには足腰の筋肉をつけていくことが大切です。ヨガのポーズにはそのようなものがたくさんありますが、今日はあえて皆様が自宅でも簡単にできる方法をお伝えしたいと思います。
ヨガというと股関節がパカッと開いているイメージがあるかと思いますが、あれは好きな人がやっているだけなので気にしないでください。別に両足が床に着いたからといって人生が開けていくわけではありません。ヨガでは実は大切なのは、股関節が柔らかいかどうかではなく、足首と膝が硬すぎないこと、なのです。もし、私の足首と膝が著しく硬ければ、このような歩き方になります。「ズドドコドコ」地面からの衝撃は全て腰で受け止めなくてはならず、1日の終わりには腰が疲れてしまいます。足首と膝がある程度柔らかければ、地面からの衝撃を吸収することができ、第二の心臓と呼ばれるふくらはぎのポンプ作用が保たれ、全身の巡りも良くなります。

このように、運動療法は、静脈やリンパの流れに影響し、筋肉と内臓から老廃物をしっかり流せる体づくりを可能にします。でも、実はヨガで本当に大切なのは、どんなポーズをするかよりも、心にどのような影響を与えていくかなのです。

ポーズ 8

心に最も影響を与えるのは呼吸のペースです。
これまで行ってきたポーズはどれも、呼吸を今より深くゆっくりと変化させていくことができます。体をゆっくり動かすことで、呼吸の波も変化を受けていくからです。
今日は、もうひとつ、気が向いたときにできる呼吸法をご紹介したいと思います。

不安で仕方がなかったり、寝付けなかったり、イライラしておかしいな、と思う時は、自律神経を整えるこの呼吸法を試してみてください。
片方ずつ鼻の穴をつかうので、片鼻呼吸法と言います。
じゃんけんぽんの田舎っぺチョキ。これで親指で右の鼻を塞ぎます。左から吸って、指で鼻を塞ぎ変え、右から吐き切ります。右から吸って、塞ぎ変え、左から吐きます。これを繰り返していきますが、わからなくなったらこれでもOK。要は、体の左右交互に刺激を与えることで、自分の体がバランスを見出す動きを促しているわけです。
今日は皆様にご自宅でも取り組んでいただけるポーズをご紹介しましたが、もしもう少し本格的にヨガを始めてみたいな、という方は、乳がん、ヨガ、指導者、クラスで検索してみていただければと思います。http://breastcancer-yoga.luna-works.com/class

あるいは、町のクラスに参加される時は、3つのことを心がけてください。一つは、乳がんの手術をされたことを、あらかじめ先生にお伝えください。そして2つ目、腕に全体重がかかるポーズは、他のポーズに置き換えてもらいましょう。例えばこういうことです。犬のポーズは、壁や椅子を使って、腕に全体重がかかるのを避けることができます。そして3つ目は、疲れたら休む、ヨガを決してやることリストに入れないでください。いかに上手にポーズをとれることとヨガが心や体にもたらす効果は比例しません。むしろ、どれくらい自分の心と体に気づきがあったかをクラス参加の目安としていただければと思います。

冒頭にお話ししましたように、ヨガでがんを直接的に治療できるわけではありません。しかし、治療に取り組む気持ち、病気と向き合う気持ちを違うものにしてくれるかもしれません。

呼吸の仕方、体の動かし方がわかってくると、QOL にもいい影響を与えてくれます。ヨガがきっかけとなり、自分の心や体と向き合ったり、慈しむ気持ちがセルフケアの習慣となれば、きっと毎日の生活が今より希望と安心感に満たされたものになります。それが、世界中で多くの乳がん患者さんからヨガと出会えてよかったという声が届けられる理由ではないかと思います。

そろそろおしまいの時間がきましたので 8つのポーズをおさらいしてみましょう。

1日一つやってもいいですし、全て通してやっても15分かかりません。呼吸法は毎日の習慣にすると、随分心の動きが穏やかになってくると思います。

(1)まず、気持ちを落ち着けるには、ローテクですがこんな簡単なポーズです「胸をなでおろす」

(2)平和な気持ちは、自分と周り、両方への感謝から生まれます。吸ってみんなにありがとう、吐いて自分にありがとう。

(3)深くゆっくりした呼吸で自律神経を整えましょう。呼吸筋をほぐし、空気を取り込めるキャパシティをアップします。

(4)リンパ浮腫の予防と可動域アップのリハビリには、Just for Today. 心の扉を開くポーズです。自分の腕の重みを使いながら開いて閉じて。今日できるところから今日できるところまで。今人気の365日の紙飛行機。どのくらい飛んだかではなく、どう飛んだか、楽しかったか、気持ちいいかが大切です。

(5)今度は向きを変えて。肩甲骨を引き寄せて、肩こり予防です。

(6)弓を弾くポーズで、新しい自分へ、様々な方向に矢を放ち、内臓のめぐりもよくしていきましょう。

(7)足首を回して膝を揉む。収縮しやすい足をつくって、めぐりを良くしましょう。

(8)田舎っぺチョキで、片鼻呼吸法です。

今日の会をきっかけに、皆様が呼吸とともに体を動かす気持ちよさに気づき、生活に取り入れていっていただけるようですと嬉しく思います。また、医療関係者の皆様にも、ヨガを心と体、そして生活の全人的ケアの一つの選択肢としてご検討いただけるようですと幸いです。

本日はありがとうございました。

岡部 朋子


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