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乳がんサポート:ヨガで取り戻す3つのカーブ:呼吸、姿勢、心

2016年5月15日、大宮ソニックシティで行われた市民公開講座で、乳がんの患者さま、ご家族のみなさまにヨガのご紹介の機会をいただきました。

埼玉乳がん臨床研究グループ(http://www.sbccsg.org) による今回の講座のテーマは「一緒に向き合い、乗り越える」でした。

講演内容を下記、記させていただきます。

(講演ここから)

みなさんこんにちは、
岡部朋子と申します。

本日はヨガで取り戻す3つのカーブ「呼吸、背骨、そして心」というテーマでお話をさせていただきます。

【息さえできればヨガはできる】

ヨガを乳がんの治療のケアに活用してくださる患者さんや医療者の方が増えてきています。
みなさまの中で、ヨガをしたことがあるという方、手を上げていただけますでしょうか。

インドで生まれたヨガは体が硬い人や病気を抱えた方には無理なのでは?まだそのような先入観があるのも確かです。しかし、ようやくそのような誤解が解けてきているように感じます。

アメリカの医学データベース Pub Med で Yoga と入れると、3466 事例、Yoga cancer と入れると297もの事例が出てきます。テキサスのMDアンダーソン病院では補完医療の専門家がチームを組んで患者さんに最適な医療サービスに努めていますが、その中にヨガも含まれてます。産婦人科でマタニティヨガがサービスとして提供されているように、ヨガが患者さん向けの正式なサービスとして提供され始めています。そこには大きな認識の普及があります。

「息さえできれば、ヨガはできる」ということです。

みなさん、鎖骨の下で両手を重ね、軽く目を閉じ、鼻からゆっくり息を吸ってみましょう。これ以上吸えないと感じたら、今度は鼻からゆっくり息を吐きます。吐き切ったら、心なし微笑んで、もう一度ゆっくり息を吸います。ゆっくり吐いて。最後、ゆっくり吸って、ゆっくり吐いて。

手をほどいて、ゆっくり目を開けてください。

今、どんな気持ちですか?
安心して、リラックスできましたでしょうか。

 希望という薬は安心とリラックスからできています。どちらも道具も何もいらない、ゆっくり吸って、ゆっくり吐いて、それだけでいいのです。

これ、5歳の子でもできますよね。私の息子は幼稚園に送り出す前、私がバタバタしていると、やってきて胸の前で手を合わせ、「ママ!、これ!」といいます。5歳の子供でも知っている心の落ち着け方を私たち大人は忘れてしまい、大人になるといろんなことに不安だ、もうだめだと大騒ぎしていることが多いですね。

ヨガで一番大切なことは、一般的に思われている「ポーズ」をとることではありません。自分の今の呼吸に意識を向けることです。それは、今、この瞬間に意識を向けること。言ってしまえば、それができればヨガは100点です。

私たちが不安になる時、ほとんどのケース、過去や未来に思いを馳せていることが多いです。病気の治療に関してもそうではないでしょうか。あの時のアレが悪かったんじゃないか。やっぱりこっちにすればよかったんじゃないか。こうなったらどうしよう、こう言われたらどうしよう。

どちらも「今」の自分からはどうしようもないことです。コントロール不可能な時間です。そんな時、私たちの呼吸は、浅くて速くなっていることが多いものです。つまり、呼吸すら今ここにあらあらず、の状態です。そしてもっと悪いことに、それに気がついてすらいないことが多いものです。

今、みなさんに体験的にご理解いただけたかと思いますが、深くゆっくりとした呼吸はリラックスを促してくれます。

【背骨の自然なカーブ】

だけど、ヨガがもたらしてくれるものは呼吸の安定だけではありません。私たちの姿勢を変えてくれます。

今日はみなさん、お元気ですか? 元気じゃない時もありますか?
元気じゃない時ってどんな姿勢ですか?なかなか「私元気ないの」とこういう姿勢(胸を張る)はできません。どうしたって、こうなってしまうことが多い。そうすると、呼吸も浅くなってしまうんですね。そんなときは、両手を組んで、こんな運動をしてみましょう。息を吸って、腕を大きく広げて、息を吐いて、体を丸めます。息を吸って、腕を大きく広げて、息を吐いて、丸めます。最後もう一度、吸って広げて、吐いて丸めます。腕は高く上げなくても、自分が今日気持ちよく広げられるところまで。

どうでしょうか。姿勢を正すと、気持ちがなんだか前向きになりますね。
ヨガ、というとむずかしい特殊なポーズをやらなくてはならない、と思うかもしれませんが、そう思ってしまうとなかなか始められないのです。むしろ、簡単でいつでも取り組める動きを覚えておき、生活の中に取り入れていくようにすると、気がついたときにすぐに自分取り扱い説明書、少し心の調子が悪いな、鏡の中の自分が猫背になっているな、というときに調整をかけることができます。

【いいことも悪いことも】

もう一つ、私たちの心はときに頑なになります。不安なときは、他人の言葉や行動に、なぜか過敏になってしまうことはないでしょうか。いつもだったら気にしないことを愛食いに受け止めてしまったり。また、悪いことを考え始めると、それが堂々巡りになってしまうことはないでしょうか。

ヨガの考え方には「善悪の判断をしない」というものがあります。禅や仏教の言葉で、マインドフルネス、という考え方があります。これは、一切の評価判断をすることなく、目の前の状況を静かに観察する、という意味です。ありのままの自分を受け入れる、という態度です。

でも、これは言うほど簡単ではないですよね。
ついつい、善悪の判断や損得勘定をしてしまうのが人間です。
善悪の判断をしない時間を持つために、実は有効な方法があります。それは、シングルタスクの時間を持つ、ということです。

私たちの脳は、マルチタスクと言って、あれをしながらこれをして、これをしながらあれをする、と言う行動をとると、勝手に脳が「損得勘定」つまり、善悪の判断処理を始めるそうです。うまくやろう、効率よくやろう、と考えてしまうためです。どっちが良いか、どっちが悪いか、の計算が始まってしまうわけです。

その反対に、シングルタスク、つまり一度に一つのことを丁寧にする時間を持つことで、私たちは物事を無心で行うことができます。
ヨガのこんな呼吸法をご紹介します。
人差し指と中指を残し、右手の指を握ります。親指で右の鼻を塞ぎ、左からゆっくり息を吐きます。吐き切ったら、ゆっくり左の鼻だけで息を吸い上げ、鼻を塞いでいた指を切り替えます。右の親指を外し、ゆっくり右から息を吐き出します。吐き出したら、ゆっくり右から息を吸い上げ、指を切り替えます。繰り返してみましょう。

いかがでしたでしょうか。普段している呼吸とは違い、指を動かすことや、片方の鼻から息を吸ったり吐いたりすることに、集中せざるを得ない呼吸法ですね。

でも、少なくとも言えることは、この呼吸をしているとき、私たちは午前中に抱えていた悩みのことは忘れている!ということです。

ありのまま、呼吸に励んでいる自分がなんだか愛おしく感じられませんか?ありのままの自分は、そのままで素敵なんです。評価、判断したくなることもありますが、それを一回忘れて、ありのままの今の自分を素直な気持ちで応援してみましょう。この呼吸法は、そんなきっかけ作りにとても役に立ちます。

難しい、と思う方はこの方法でも。そう、田舎っぺチョキです。本来、ヨガでは人差し指はエゴを示すため、それを眉間に当てるのですが、そこまで難しく考える必要はありません。安全に、自分に思いやりを持ってやっている限り、ヨガは比較的自由です。両鼻を切り替えながら、呼吸してみましょう。

自分の呼吸に意識を向けると、呼吸が滑らかになってきましたか?私たちの生活には、いいこともあり、悪いこともあるかもしれません。でも、いいことも悪いことも、実は波のように流れて行っています。がんばることも時には必要ですが、時には流れに身を任せてみよう、と思うことで気が楽になることもあるかもしれません。

【街のクラスに参加してみよう】

さて、日本全国で乳がんの方向けのクラスが増えてきています。実は、埼玉県には乳がんとヨガのクラスが全国で一番多いのです。

乳がん患者さん向けのトレーニングを受けたヨガの先生は、皆さんがヨガを安全に楽しむために配慮をしてくれます。しかし、そうではないクラスに参加する時も次の三つのことに留意いただくことで、ヨガを安全に始めていただけるかと思います。

まず第一に、腕への負担をかけない、ということです
ヨガのポーズの中には、腕への体重負担となりリンパ浮腫のリスクを高めるものもあります。でも、心配はいりません。壁や椅子を上手に使って、腕に負担をかけない工夫ができるのです。

例えば、こういうポーズ(犬のポーズ)は椅子を使って、四つん這いのポーズは、椅子に座って、腕立て伏せのポーズは壁を使って。

二つ目は、疲れすぎないように、ということです。ヨガにおいて、ポーズの難易度と効果は比例しません。気持ち良さと効果は比例します。疲れすぎるほどヨガを行ってしまうことは逆効果になります。 腹八分目ぐらいの気持ちでクラスに望むことが、結果長く続けることができます。

三つ目は、呼吸は深くゆっくりと、という点です。ヨガセラピーのゴールは病気の治癒そのものではありません。今よりもぐっすり眠れること、そして今よりもストレスから解放されることです。

【まとめ】

ヨガは私たちに3つの波を取り戻すのを助けてくれます。

一つ目は、自然な呼吸の波。心配事が増えるとどうしても呼吸が速く、浅くなり、そのことにも自分で気づけないことが多くなります。これは、ご家族の方も同じかもしれません。気がついた時、鎖骨の下に手を当て、患者の皆さまやご家族の方が深呼吸することで、お互いの呼吸の波がだんだんゆっくりなっていくのを感じていただけたらと思います。

二つ目は、自然な背骨のカーブ。私たちの体には、自然と元に戻ろうとする力が備わっています。腕の前で手を組み、背骨をしなやかに動かしてみましょう。それだけで、私たちの体は自然の姿を思い出し、素直な自分、前向きな自分を取り戻せるような姿勢に近づくことができます。

三つ目は、心のカーブ。同じことをクヨクヨ考えてしまったり、悪い方に悪い方に考えてしまうのも、人間らしさかもしれません。だけど、ずっとそれが続くと疲れてしまいますね。そんな時は片方の鼻で呼吸をして、気持ちを落ち着けてみましょう。いいことも悪いことも交互にやってきます。そして流れていきます。呼吸の流れに身を任せ、心を今のリズムに任せてみましょう。

今日、会場には埼玉県内で乳がんのヨガを教える先生方のグループがお越しくださっています。
彼女たちが最近、とても素敵なポスターの配布を始めました。

診察前、緊張してきたな、と思ったら、深呼吸しましょう。というメッセージです。診察室でこれが目に入ってきたら、ぜひ深くゆっくり呼吸をしてみてください。ポスターは全国に無料で配布の予定です。病院やクリニックの先生方で待合室にポスターを貼っていただける、という方はぜひ「ルナワークス x 乳がん x ヨガ」で検索いただき、お問い合わせください。

最後に、みんなで3つのカーブを整えてヨガの時間を終わりにしたいと思います。
片鼻呼吸。
体の前で手を組んで。
そして最後に深呼吸。

ご静聴、ありがとうございました。

(講演ここまで)

このような貴重な機会を与えてくださった埼玉乳がん臨床研究グループのみなさまに心より感謝申し上げます。

深呼吸ポスターA2

2016市民公開講座中外製薬


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