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人々の暮らしに役立つような説明を

アメリカではヨガと様々な疾病、症状について多くの臨床研究への取り組みがあり、そのエビデンスはアメリカ社会の補完代替医療への関心の高まりを後押ししています。

しかし、補完代替両方の比較対照実験には被験者集めから実験環境から多くの制約があり、完了には多大な労力を要します。

そして、科学の前提が「仮説を立ててそれを検証する」という前提のもと「ヨガが科学になりうるか」という命題を考えたとき、ヨガと出会う一人一人の人生に、色づきがあり、歴史があり、いかなる集合体の人生に仮説をたてることがまず不可能という時点で、科学としての証明が難しくなるわけです。

また誤解を怖れずにいえば、論文集に掲載されたエビデンスはデータとしての有効性は高いかもしれませんが、ヨガによって健康上の影響を受けた人々のごく一握りのデータでしかありません。しかも、そのエビデンスは西洋医学や薬学の人々を説得させるに足るだけの画期的な臨床データではないのです。

医療の世界で避けなければならないのは「逸話的症例」をあたかも効果があったかのように扱うことといわれています。そして、ご存知のように、ヨガをセラピーと感じている人々にとって、その逸話はこの世界中に数知れず存在するのです。

また、ヨガはソマティックサイコロジー、つまり体を使った心理学の体現であり、体が変われば心も変わる、しかしそれはそんな単純なものではありません。心が晴れる前に、自らの闇をのぞき、ひと嵐来るのです。だけど、ヨガはすぐできて間違いなく気持ちいいもの、と決めてかかると、やっぱりヨガも役に立たなかった、とがっかりされてしまいます。伝える側としては、それでは勿体ないと感じます。ヨガの何が私たちを変えていきうるのかを、わかりやすく伝えていくには果てしない道のりです。

そんな時、アメリカのがんのためのヨガセラピストとして第一線で活躍している看護師であり、私の恩師であるニャーニ・チャップマン先生がこう話してくださりました。

西洋医学に対抗するために、苦労してエビデンスで理論武装するより、現在導かれている科学や理論を用いて、ヨガの効果効能をわかりやすく説明し、ヨガセラピーへの偏見や鎧を外してあげること、そこからです。ヨガは怪しくも危険でもなく、確かにいい影響があるかもしれないという期待をもてなければ、人々はヨガを始めようとは思わないでしょう。

そのひとことが、それまで出口のないトンネルの中でヨガセラピーの答えを探し続けていた私に、今するべきことを示してくれました。シニアヨガを学び始めたときの初心に立ち返らせてもらったともいえます。

頭でっかちに理屈やエビデンスをこねくり回すのではなく、皆がわかる言葉で、だけれども確かに説得力のある説明をもって、ヨガが私たちの心と身体、とりわけ苦しみのもとにある心と身体にどういう効果があるのか。その鍵を握るのは、究極的には幸せや苦しみ、恐怖などを感知し体内に巡らせる私たちの脳と神経へのヨガの影響です。

心と身体、その両方に効くヨガセラピーは21世紀の人類の健康にきっと役立つと信じています。

2015年 初夏 岡部 朋子

(ワークショップ「脳と神経のヨガ」序文)


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