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カラリパヤットゥの強烈さ

家族でカラリパヤットゥの稽古をつけてもらった夜、息子はさすがに精根尽き果て、すぐに眠りについた。
二人で月を見ながらカラリについて感じたことを話し合った。

こういうときに、主人がちゃんと話し相手になってくれることは読んで字のごとく「有難い」ことだと思う。
地球上のほぼすべての哲学が対話の大切さを説いているように、師弟、親子、夫婦、友人などの間で対話がきちんとできるというまっとうさは極めて貴重になってきている気がするし、それと同じぐらい「呼吸が気持ちよくできるふつうさ」というものも現代人には失われつつあるのではないか、とヨガを教えながら思うことが少なくない。呼吸はまさに吸う息と吐く息の対話/調和だが、吸う息ばかりで苦しくなったり、吐く息が浅いため新鮮な空気が入ってこなかったり。

主人が最初にしてくれた面白い話は、日本でどうしていままで伊藤若冲氏が日の目を浴びてこなかったか。それは日本で着実に地位を築いていった茶の湯文化にとって、若冲の作品は主張が強すぎただのだという。それと同じように、カラリもかなり強烈だね、という話から。

私が尊敬するインド研究家の伊藤武先生に学び、ヨガの歴史を掘り下げていく過程において、一番腑に落ちた言葉は「癒(いやし)を伴わない烈(いさみ)は片手落ちとされた」ということです。先生に勧められ、2012年、南インドケーララ州にあるカラリパヤットゥの道場を訪ねました。ふんどし一丁で肌を油でテカらせ、土間の上で額に汗をする少年の動きに目は釘付けとなり、ヨガのルーツがそこにあることを確信しました。
昔は兵士たちの心身管理の一環として、祈りがあり、トリートメントがあり、動きの練習があったのでした。

カラリの練習を通じて感じたことは、単なる護身術ではなく、免疫力(内臓力)を鍛えること、もうひとつは心の抵抗力をつけていくこと(これを精神力鍛錬というのかもしれませんが)だということです。
これは、ヨガの哲学の根底にもあるアヒンサー(非暴力)の大切さをといてきたガンジー氏、アウンサン・スーチー氏の思想のもとにもなっているのではないかと思うのです。つまり、防御こそ最大の攻撃、ここでいう防御とは、生きとし生けるものへの寛容さ、許しでありましょう。

空威張りの強さで拳をあげるのではなく、丹を鍛え、弱いものを守り、許せる強さをボトムアップしていく場。
私たちが日頃いかに、小さなことにすら寛容になれず、許すことができず、悪魔にのりうつられていることか。

メディカルヨガの根底にあるものも、病気を治すことではなく、自分の中にある自然を強くしていくことなのではないかと思います。だからたとえ病に伏していたとしても、意識があり、息をしている限りヨガができる余地はまだまだある。

ヨガやカラリ、アーユルヴェーダの教えを通じ、きっと私たちは「命あるものは弱る/汚れるという前提」に気づき、また
「本当の強さ/清らかさは一瞬にしてできるものじゃない。自然と同じように、だんだん時間をかけて作られる」ということを知りうるのでしょう。

ヨガ、アーユルヴェーダ、カラリは昔の戦場医師の必修科目。
となると、この現代、スマートフォン片手に電車に居合わせる彼女たちが古代のインド兵士に思えてきます。
老いも若きも時間に追われ、情報処理に余念がない。まさに忙殺、忙しさに殺されかけています。
本来女性に備わっていた優しさ、余裕、寛容さを取り戻すためには、ヨガの呼吸や操体を通じ、心身のバランスを取り戻さなくてはなりません。

ヨガは女性の間で人気があるけど、カラリはボクシングやトライアスロンのように現代の闘いに挑むアスリートたちにも心身鍛錬としてお勧めしたい、男性にはむしろこちらの方が張り合いもあるだろう。

そんなことを主人に聞いてもらいながら、しっかりくさびを打たれたひとこと。
確かにカラリは面白いし、奥深い。だけど原点を見失っちゃいけない。
「ヨガは息さえできれば誰でもできる」というのがメディカルヨガの入り口のはず。たとえカラリにヨガのルーツがあったとしても「カラリ学ばねばヨガにあらず」になっては朋子も生徒さんたちも道を見失ってしまう。今の世の中、ヨガが昔の茶の湯のように普及する可能性を秘めているのであれば、カラリはあくまで嗜み(たしなみ)の域で十分だと思うんだ、と。

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息子を連れて南インドにカラリ修行へ・・の出来心は、ほどなくその火を消されました。
でも、伊藤先生からもっといろんなことを学びたく、8/31から息子とともにインドネシアの世界遺産、ボロブドゥール遺跡の立体曼荼羅を見に行ってきます。
先生曰く「ヨーガの哲学をヴィジュアルな空間体験で表現したものです」


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