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いろいろいっしょで平和を:全日空機内誌 2013年9月号旅育日記

息子の名前「航一」には、旅を一番の楽しみにしてほしい、という願いを込めた。

 まだ首がすわらないうちから白いシーツの上に仰向けになり、パスポート写真を撮らされた息子。困りはてた顔は5歳まで有効だ。お食い初めのお料理は結局親が食べるのだから、二人が好きなレストラン行こうと、生後3か月でニューヨークへ。それ以降、ブータンでは「キレドジィ」(剣をもったヤンチャ坊主)というブータン・ネームをつけてもらい、花の都ダラット(ベトナム)では、スクーターの3人乗りに挑戦させられた。ずいぶん大人の都合にふりまわされ……3歳になったばかりのパスポートはすでにスタンプがいっぱいだ。

 インドで私の仕事があるときは、息子を現地のベビーシッターさんや保育園に預けた。「おまえ、またやったな!」と糾弾するように涙を浮かべる息子の眼力を忘れられないが、強気なことを言えば、親なりに我が子を信じようとしたのだ。「きみならできる」と、この名前をつけたのだ。とはいえ、いきなりインドの現地語や英語の環境に放り込まれ、大人なら間違いなく知恵熱を出すであろうところを、Mr. アダプテーションの称号を与えたいほどの適応力を発揮してくれた。彼なりの開き直りなのか、今では彼女たちに片言の日本語を教えている。

 息子はいつか2つのことに気づいてくれるだろうと願っている。

 1つは、この地球は知り尽くせないほど多様性に満ちているということ。国が違えば話している言葉も食べているものも違う。違いだらけだ。一方で、人や社会の本質はそんなに変わらない。どんな国の人も、おはよう、ありがとうと言えば笑顔で返してくれるし、一緒に食事をすれば心を開いてくれる。働くことは尊く、家族や友人を大切にする。多様に見える世界でも、同じ人間同士わかりあえることはたくさんある。

 私はヨガをまったく知らない人にヨガを伝えている。ヨガって何ですかと聞かれると、「共存共栄」と説明する。立場を異にするもの同士が調和することで、意味(世界)が生まれた、というのがインド哲学の始まりだ。多様なものが存在する社会では利害関係や矛盾、葛藤があって当然。時に私たちは自分の中ですら分裂を起こしてしまう。だから心を落ちつかせて、自分や相手に耳を傾けてみようというのがヨガの練習だ。

「いろんなところに旅をして、いろんな夢を見ておいで。そしてまたきっと、きみのそばで会おう」(銀色夏生『きみのそばで会おう』角川書店)。私が子どもの頃から胸に抱く一篇の詩。これからも、いろいろ! と驚いて、いっしょ! と握手をしておいで。

【プロフィール】おかべ・ともこ
ヨガ・インストラクター。「統合補完医療」としてのヨガの普及を目指し、高齢者や乳がんの方、アスリートなどに安全でわかりやすいヨガを提供できる社会の実現に向けて取り組む。

(全日空機内誌 2013年9月号旅育日記 より抜粋)


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