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社会人野球チーム向け冬期トレーニングとしてのヨガ

社会人野球チームの冬期トレーニングとしてのヨガ、へのアドバイスをご紹介させていただきます。お問い合わせをいただいた内容にお返事するかたちをとっていますので、文脈等不自然なところがありますがご了承ください。

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まず、一番注意しなくてはならないのは怪我の予防です。
まだ運動をするうえで根深い誤解がありますが、ストレッチは怪我をする行為です。
体温が低く、結合組織(靭帯や腱)がほぐれていない状態でいきなりストレッチ性の高いヨガのポーズをすることは自殺行為です。ですので、しっかり身体を温めるウォーミングアップをメニューに含めるようにしてください。
具体的には、足首を回す、膝のうらを揉む、わきの下を揉む、腕の前を揉む、首を丁寧に回す、の5つをやっておけばいいと思います。それから、アスリートであれば軽い火の呼吸で身体をあたためてもいいでしょう。

野球選手の傾向としては利き腕の使い過ぎにより、可動域が狭くなったり、左右のアンバランスを引き起こし、それが故障の原因となります。お尻、太ももも硬くなりがちで、腰痛を招きます。また、プレーには柔軟な体幹が必要となるため、ヨガのツイストのポーズでバランスをとりながら鍛えていくことは効果的です。全身の左右の差が著しい状態より、バランスのとれた身体を作っていくことで、プレーにキレがでてきますし、故障も減らせるでしょう。

メニューを考える上では下記のポイントを参照にしてください。

太ももや臀部の硬さ 腰への負担 前屈の仕方が悪い 腰への直接の振動
>> 前屈のときは必ず膝を曲げる、犬のポーズも膝を曲げてから徐々に伸ばしていく
左右、部位のアンバランスの解消
可動域の制約(身体が硬い)>> ポーズの完成形に拘らず、可動域にあわせポーズを簡略化する
腰が入るといいパフォーマンス 重心移動は体軸から生まれる 
オーバーユース(野球肘など)対策
試合前の緊張対策(胸がとじ、呼吸が浅くなる)>> 胸を開いて深くゆっくりとした呼吸をする意識
試合後の疲労対策(回復も練習のうち)>> 腰を伸ばし心身を委ねる子供のポーズやあおむけのリラクゼーションなど

また、メンタル面で活かせるのが首のチャクラをゆるめることです。首をマッサージしてもいいですし、丁寧に回してもいいでしょう。コミュニケーションをとることがスポーツ障害の最大の予防になります。
たとえば、故障が再発した場合、そこは癖になっているからアイシングを怠らないように、というようなコミュニケーションがちゃんとできるかどうかが大切になってきます。どうしても、コーチや監督と、選手との間には、緊張や遠慮が存在します。しかし、その上でどうやって、本音のコミュニケーションをとっていくか。首のチャクラをこわばらせない取り組みが必要です。

柔軟性アップも大切ですが、体軸づくりも大切になってきます。

身体に柔軟性があるほど怪我をしにくくなるというのは事実です。しかし身体が柔らかいがために引き起こされる故障もあります。それは野球肩です。身体が硬いとそれだけ故障しやすくなりますが、柔らか過ぎても故障に繋がります。特に肩甲骨の柔らかさには注意が必要です。

肩甲骨は背中上部に浮いているようにある左右2つの骨です。浮いているだけあって、可動域は比較的大きな骨です。前後にも左右にも動かすことができます。柔軟性が高いがためにこの肩甲骨の可動域が広過ぎてしまうと、肩痛を引き起こしてしまいます。ただ、これは諸刃の刃です。可動域が広いことで球威はアップしますが、しかしその分肩にかかる負担も大きくなるのです。

肩甲骨の可動域が広いと、ピッチングでテイクバックをした際、腕が背中側に大きく入っていきます。すると腕のアクセラレーション(加速)幅が広くなることで、球威や球速はアップします。ですがここには弊害もあるのです。それは、腕(肘)が背中側に入り過ぎてしまうと、腕がしっかりとトップの位置に到達する前に投球モーションが進んで行ってしまいます。つまり、腕・肘が下がった状態で腕が振られてしまうわけです。
状態が良い時はトップをしっかりと作れることもあります。しかし疲労などが出てくると、他の投手以上に肘や腕が下がりやすくなります。肘や腕が下がれば、それは肘痛や肩痛の原因になってしまいます。
ただし、肩甲骨の可動域が通常よりも広かったとしても、必ず肩痛が起こるというわけではありません。例えば体幹(コア)を強化し、下半身~体幹という流れで力強く腕をリードしてあげることで、肘・腕が下がることを回避することができます。この場合体幹の中でも特に腹斜筋が重要です。
やや内旋させたグラブ手を投球方向に突き出し、それを外旋させながら力強く腋に巻き取ることで、投げる側の腕の力を用いずに、腕を強く振ることができます。そして力強く巻き取ることで、体幹をグラブ手側に傾かせることができます。投球時に体幹がグラブ手側に傾くことで、相対的に投げる側の肘・腕を上げていくことができます。これができれば肩甲骨の可動域が通常よりも広くても、肩痛を起こすリスクを軽減させることができます。
これは肩甲骨の可動域が広くないピッチャーにも同じことが言えます。腹筋・腹斜筋・背筋などのコアをしっかりと鍛えることで、肩痛のリスクは確実に減らすことができます。

「勝つ」ことへの価値観についてですが、勝ちたい自分と争わないというヨガの価値観の間に矛盾があることを知ることもヨガのプロセスと思います。車の両輪のように、勝つこと以外の価値観を育んでいくことも意義があるのではないかと思います。勝ちたい自分、強くなりたい自分がいて、そして自分は何のために野球をしているのか、ということを自問するには冬期のトレーニングはとてもいい機会なのではないかと思います。

クロストレーニングにおいてヨガが活かせるのは「今に意識をもってくる」ということです。よく「勝ちを意識した瞬間に、身体は負けるように動く」と言われます。勝ちたいと思うことは今のことではなく未来のことであり、今への集中力がゆらいだとき「勝てなかったら」「過去の負けたときの記憶」などが心の隙間に入り込んできます。これ話すと長くなるのですが、私たちの脳は二つあり、対立する構造を持っています。「やろう」とする自分と「逃げる」自分がせめぎあうようにそもそもできているわけです。そのせめぎ合いを逃れる道はただひとつ、目の前のことを丁寧にやることです。ヨガはそんな練習になるのではないでしょうか。

初めてヨガというものに取り組む選手のみなさんに対し、ヨガを怪しまれないこと、嫌いになられないこと、そして楽しくて気持ちいいと思ってもらえたら御の字なのではないでしょうか。


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