ティモシー先生からのデンマークからのレポートです。
仰向けの合踵のポーズを含め、ボルスターに背中を預けるポーズはリストラティブでありながら、背中を緩やかに反らせることにより、活性化も見込めます。
大人になるにつれ、おなかを薄く見せるためにおなかを引っ込めたりしているからです。
ティモシー先生がリズを観察した限りでは、下腹部に緊張が残る以外は特に不具合は見当たらなさそうでした。一般的な腹式呼吸では息を吸うときおなかが自然にふくらみ、息を吐くときに下腹部はリラックスします。そして、息をはきながら背中は沈み込んでいきます。リズの場合はそれが逆になっていたのです。息を吸いながらおなかを硬くし、息をはきながらおなかが膨らんでいたのでした。先生は彼女に奇異呼吸のことを伝えました。リズは驚き、かえって不安になってしまったようでした。しかし、結果的にそれに気づいたことがよかったのです。
ティモシー先生は、リズの手をおなかの上にのせてみました。彼女が、おなかのふくらみやへこみを感じられるようにです。そうすることによって、たちまち彼女は正しい腹式呼吸に戻ることができました。気持ちいいリストラティブのポーズで、正しい呼吸のまま、穏やかに10数分休息を取ることができたのです。 リズには骨盤底筋群の緊張も疑われていました。そこで、ちゃんとした腹式呼吸ができるようになった次の段階として、骨盤底への意識を促してみました。リラックスして背中をボルスターに委ねた状態で、息を吸うにつれ、骨盤の底が広がり柔らかくなっていく様子をイメージし、息をはきながら、骨盤が優しくしまっていき、持ち上がる様子をイメージするのです。実際、骨盤底の筋肉は自分の意志でコントロールしがたい筋肉群ですが、彼女に起こった変化は、感情面のリリースでした。呼吸に意識を向けることで、彼女は自分の心の中のものと向き合い、そして自然にそれを外に追いやることができていったのです。その後ティモシー先生が彼女の脈をとったとき、それはとても落ち着き、自律神経のバランスも整っていったのでした。
最後に、踵をあわせて自然な重みで膝を開くことでリズの内股の筋肉に柔軟性が戻っていきました。なので、最初はプロップスを差し入れなかったのですが、数分経たないうちに、彼女は膝がおちるのを訴えたため、膝の下に丸めた毛布を差し入れたところ、彼女は安心してとてもリラックスできるようになったのでした。
この寄りかかった仰向けの合踵のポーズを数週間続けたところ、彼女からは「私にとても合うポーズだったようでした!とても深く休めるし、呼吸を教えてくれました。身体が自然に開き、感情もリフレッシュできます。自分がポーズをしているのをいつでもイメージできます。ストレスがたまったらできるいろんな呼吸法はあるけど、こんなに簡単で確実な方法はないようです」という喜びのお便りが来ました。
実はこの最後の言葉に、ヨガの秘訣が隠されています。
ストレスがたまったときに自分のために何かができる、という気づきこそが、彼女の人生を変えていったのです。