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ヨガの臨床研究の現状・限界・可能性

以前、ヨガセラピー学会の基調講演でYoga as Medicineの著者M.D. Timothy McCallが「ヨガは科学になりうるか」というお話をされたときのことを書きましたが(こちら)、今回はその後アメリカでヨガセラピーのリサーチ(臨床研究)がどういう方向性を向きつつあるか、ということについてご紹介したいと思います。

どんな研究でもそうですが、仮説を立てないことには立証ができません。
ヨガも初めは「バイオメトリクス(生物・生体測定)」な数値の変化を追いかける研究が主流でした。なぜなら、それはとても説明がしやすくわかりやすい(Comprehensive) ため、医学や臨床現場の人々がそれを求めるからです。

米国ではNIH(国家保健機構)とよばれる国の機関をあげて、ヨガをはじめとする補完代替療法の臨床研究が盛んに行なわれてきています。

しかし様々なジレンマも見え始めています。

マニュアルに基づき、すべての人におしなべて同じシークエンスを行なう。これでヨガが真の意味で「インターベンション(介入)」になり得ていると言えるのだろうか。

研究費がでてもできることが限られている。例えば、オンコロジーセンターは人が一番集まるのに、予算許可がなく、先生を雇えない。Commandment Chief (オバマのような人)が許可を出さない限り、雇えない。

末期がんの人に、バイオメトリクスの実験を依頼できるかどうか。

などです。

ヨガが薬になりうるとしたら、その効能をどう説明しうるか。
Translated Medicine についての議論が始まっています。

どうしたらヨガの効果を測定可能なものにできるか。
Biometrics な指標だけでなく、Qualitative、つまり被験者の生活の質がどう変わったか、について深遠な情報が得られるのは「Patient Report/survey」(患者さんのレポート/調査)からです。生体検査よりもはるかに時間がかかります。

バイオメトリクスな数値がまったく意味をなさないということではありません。
しかし、ヨガの効果を可視的なものにするためには

行動がどう変わったか
感情にどんな変化があったか
生活機能にどんな向上がみられたか
身体上何か回復がみられたか
人との関係において何か改善がみられたか
認知・記憶行動において向上がみられたか
考え方の志向に何か変化があったか

という指標で、記録をつけていくことこそが「その人」のありのままを認め、その人にとっての「Who you are」というヨガの本質的な問いかけの変容を確認する上で、不可欠なのではないか、そして、残念なことにそれは今の研究では結果に反映されてこない。研究にそれらをどう反映するか、ということがヨガセラピーの現場で話題になっています。

Deductive (演繹的/推論的な)な検証から、Inductive (帰納的な)そしてEmpirical(経験を大切にした)研究の大切さへ。

アメリカは何でもやったことを世界一にしたいんだ!NYがそのいい例じゃないか!という本音も飛び出し(笑)、でも、この何でも一番になりたいというエネルギーが学問の分野で馬力あるエンジンになっているのだと思いました。

愛誠病院でヨガのプロジェクトを始めさせていただくにあたり、新見正則先生がおっしゃったことが心に残っています。実は私自身もアメリカの臨床結果を携え、ヨガは患者さんにいいはずです、と先生を説得にかかろうとしました。しかし先生がおっしゃったのは、「僕は科学者(医者)だから、科学研究の限界なんてわかっているの。でも、岡部さんにいわれてヨガをやってみたら、理屈抜きに気持ちよかったんだよね。だから、患者さんや従業員の方にもそれを味わってほしいの。病院でヨガを始めて、人間ドッグの受診者の方が増えたり、従業員の表情が生き生きとし始めたら、それこそが結果なんじゃないかな。」
先生は、ヨガのQuantitiveな効果をとらえる重要性に最初から気づいていたのでした。
そんな先生のもとで、愛誠病院のプロジェクトを始められることはとても恵まれたことだと思います。場合によっては、ヨガをやって患者さんの血圧がどうなりましたか、心拍がどうなりましたか、そんなことを求められる可能性もあったかもしれないのです。
参加される方にどんな変化があるか、プロジェクトでも上記の指標による記録を試みたいと思っています。

ヨガセラピーに関わる方々、臨床研究の数値だけでなく、患者さん、生徒さんの変化を観察してみましょう。きっとそこに数値以上のものが見えてきます。


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