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父のためのメディカルヨガ:2014 夏:父の気づき

4月に妊娠が発覚してから、自分のことで精一杯で、父のことに気が回りませんでした。
脊椎管狭窄症を楽にするポーズはいくつか伝えてきたものの、果たして取り組んでくれているかどうか。

ようやくつわりも楽になってきたので、久しぶりに盛岡に帰省しました。
久しぶりに会った父は思ったよりは元気そうで安心しましたが、歩き方が私にそっくりでした。つまり、妊婦さんのようだったのです。

脊椎管狭窄症では、数メートル歩くと、休まないと、また歩き出すことができません。
それでも、新聞を買いにいく、や、外の空気を吸いにいく、と散歩を心がけているのはいいことです。

先日、母が近所のデパートで健康フェアをやっていて、無料の健康相談をやっていたので受けてきたそうです。実年齢より若いと診断され、ウキウキして父に報告したところ、じゃあ俺も行ってみるか、ということで父も行ってみたそうです。そうしたら、ブースにいるおばさんに「お客さん、ちょっとちょっと」と呼び止められ、「旦那さん、姿勢がずいぶん悪いねー、それじゃ腰も痛いでしょう」と言われ、父にしてみればそんな小さなことですが「見抜かれた」と思ったそうです。
その後、足形をとり、足の親指を使わないで立っていることも指摘されたそうです。つまり、重心が外へ外へ流れている。妊婦さんと同じです。
ついには足の中敷を勧められ、お値段をきいてまあびっくり。まさかの10万5千円。その場ではサインせず、場を離れたそうです。その帰り、同じデパートの靴売り場によって靴のインソールをみたところ、お店の人がちゃんと対応してくれ、父の足形に合わせたインソールを4-5千円でつくってくれるとのこと。

その話をしながら、父は「いや、確かに姿勢が悪くなったのは認める」といっていたのと「そのインソールを入れると歩きやすくてびっくりするんだよ」といっていました。

私は姿勢の専門家ではありませんが、ヨガを通じ姿勢の大切さはもちろん理解しているつもりです。でも、娘から父に「お父さん、姿勢が悪いよ」と口酸っぱく言うのは逆効果かな、と思い、これまであまり指摘してきたことはありませんでした。多分父にしてみても「そんなのわかっているやい」で終わってしまっていたと思います。でも今回、父はたまたまその高額健康グッズ売り場を通りかかった縁で、自分で気づくきっかけをもらえたのです。耳を傾ける余裕が生まれているようでした。

そこで「お父さん、お父さんが自分で姿勢の大切さに気づいてくれるのを待っていたよ。」と、次のような絵を描いて「頭っていうのは、脳みそがたくさんつまっているから重いんだよ〜」と、頭の位置の大切さ、つまりハトさん首がいかに背中や腰に負担をかけるか、について説明しました。そしてそれが最終的に、歩くときの足と腰の負担になっているかも説明しました。

写真 4

ハトさん首のエクササイズについては、こちらをご覧下さい。
http://medical-yoga.luna-works.com/column/archives/1897

「でもね、お父さんの年で、それじゃ足生をいつも意識して生活しよう、っていうのは無理があると思うの。だから、インソールとかを使って、足にかかる加重を少し変えるだけで、ずいぶん姿勢の取り方も変わってくると思うよ」とお話ししました。

そう、姿勢が悪いことはもちろん問題ですが、自分で意識して治せていないことが、本当の問題なのです。

「どんなにいいものでも、10万5千円はぼったくりだね。4000円ので十分十分」とも言いました。それは母がついていてくれるから大丈夫だと思います。

それから、足の親指に加重をかけ、内股をつかって立つには、ヨガの山のポーズがいいことを説明したいと思ったので、あえてヨガとか、山のポーズ、ということは言わず、父が大好きな孫の航一のスキー自慢を活用させてもらいました。

お父さん、普通に立ってみて。
「こうか」
やっぱり妊婦さんと同じです。足が外側に開いて、立ちの姿勢でも腰が引けてがに股になっているのです。
「いや、こえー(怖い)からついついこういう姿勢になっちゃうのよ」

お父さん、足の外側を平行にするようにして立ってみて。
「こうか」
「けっこう、内またでしょう?」
「そうだな、航ちゃんのスキーするときみたいだな」
そう、(航ちゃんを呼んで)
「こうちゃん、ジイジに、どうやってスキーで止まるのか教えてあげて」
「じいじ、こうやるんだよ」
父は、孫のコウイチと話すのが大好きなので「そうか、航ちゃん、こうか!」と大げさに驚いてやってみせました。
「こうやって立つと、違和感があるでしょう?」
「なんだかそうだな」
「だけど、内ももの筋肉を使わずにはいられないでしょう?」
「使わずにいられない!」
「本当は普段からこうやって立ってほしいの。そうすれば、内股の筋肉も衰えないし、妊婦さんみたいな歩き方も変わってくるよ。でも、きっと大変だから、最初はインソールを入れて慣れてみて」

写真 3

じつはこの「足の外側を平行にして立つと足の内ももを使わざるを得ない」というのは、リストラティブヨガの恩師であるJudith先生に教えてもらったメソッドです。「ね、こうして立つと(本当はその上で、骨盤をちゃんと立てることも必要なのですが)バンダも自然とひき上がるの。これが山のポーズなのよ。ヨガのクラスで、顔を真っ赤にして「バンダ引き上げて」なんて頑張っちゃうのはバカげているわ。人間の体ってもっと自然にそうなるようになっているのよ。それを見つけ、身につけるのがヨガの練習なのよ。だからヨガの練習って本当はとっても気持ちいいのよ」そう教えてくれました。

思えば最後に盛岡に来たとき、父に「気が向いたときやってね」と壁に貼っていったのは「椅子のポーズ」でした。ヨガの先生はどうしても「ポーズ」を教えようとしてしまうのです。でも、ヨガの指導者にとっての制約(オキュペーショナル・ハザード)もまた、ポーズへの執着を捨てられないことなのだ、ということを思い出しました。ヨガセラピーで大切になってくるのは、私が教えたい「ポーズ」を教えることではなく、相手にとって必要で、かつ、できることを提案してあげることだったはずです。そうでなければ、私はヨガの先生ではなく、アーサナ(ポーズ)の先生でしかありません。

写真 2

もちろんこのポーズも、内ももを弱らせないためにも父に続けてもらいたい日課ではあります。でも、それ以前に父の日常生活を楽にするために必要なのは、父の体重を支える構造、つまり姿勢の改善だったのでした。しかも本人の意思でそれを心がけるのは難しい年齢、そうであれば、ブロックやボルスター同様、プロップスを使うことは必要でさえあります。嬉しいのは、父がそれを取り入れるのを本人が納得して受け入れてくれていることです。

さて、骨格系はまた一歩、新たな風が舞い込みましたが、父の人生は骨と筋肉だけではないはず。心もいつまでも元気でいてほしいものです。それには、再び息子に力を貸してもらいましょう。

写真 1

幼稚園の発表会のために一生懸命練習した「お時計さん」の歌を、じいじとばあばの前で元気に披露です。
時計の飾りを頭につけて、ステージの脇から堂々と登場、「コチコチこっちん、お時計さん!」と大きな声で歌います。
あまりにも一生懸命歌ったので、頭蓋骨がふくらんだのか、おでこにまいていた時計の飾りが、パチン!とはじけてしまいました。
じいじはお腹を抱えて大爆笑。

一日一回、いや、多ければ多い方がいいのですが、大笑いすればするほど細胞が元気になるそうです。
今日も航一はジイジの長生きに大貢献しましたね!

さあ、インソールが届くのが楽しみです。
歩くのがもう少し楽になって、第二子が生まれるのを見に来てほしいなあ。


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