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EMDR/トラウマ/レジリエンスについて考える

先日、EMDR(眼球の左右運動)とトラウマのこと(記事はこちら)を書き始めて、話が明後日の方向に行ってしまったので、あらためて書き直してみます。

眼球を左右に動かすことで、フリーズしていた記憶が1つの通過点になる、というようなことをお話ししました。

その後、メディカルヨガでお世話になっております、帝京大学病院の新見正則先生の「誰でもぴんぴん生きられる」(サンマーク出版)を拝読する機会を得ました。

テーマは「レジリエンス」です。「回復力」と訳されることもありますが、イメージとしては、鉄の棒と竹の棒の違いなのかな、と思います。ガン、と跳ね返す強さなのか、吸収してビヨーン(きっとこういう音ではないと思うのですが)と跳ね返す強さなのか。

お風呂につかり、心からリラックスすると、「生き返った~」という気持ちになる。
病気になって寝込んでいたけれど、やらなきゃいけないことがあって気持ちがそちらに向いていたら、いつのまにかよくなっていた。
いい音楽を聞いてリラックスしていると、なんだか元気がでる。そんなことってありますよね。
以上、Amazon 商品の説明より抜粋

これを読んで、EDMRの眼の動きや、ヨガの操体的要素(体の前後左右のバランスをとっていく)、呼吸法(吸う息と吐く息のバランスを調整していく)などは、すべてこのレジリエンシーにつながるのではないかと感じました。
なぜなら、ヨガもレジリエンスも「ならばトレーニングで鍛えて高めていきましょう」という類いのものではないように思うからです。
新見先生の本も、もちろんそういう内容ではありません。むしろ、読み終わったあとにとてもほっとする、病気に不安を抱えている近しい人たちにプレゼントしたくなる、そういう後味の良い内容でした。(おすすめです!)

レジリエンスについては、NHKクローズアップ現代でもこの春「“折れない心”の育て方」として取り上げられていたそうです。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3486_all.html

心理的レジリエンス、身体的レジリエンス共に、つまりは「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」ということになりますが、誰しも、危険にさらされると、それ以上の危険に命をさらさないための防衛反応として、ホルモンや神経伝達物質を放出させるとのことです。しかし、それがやがて回復に向かう家庭で影響を及ぼすのが「慢性化」などの要素だとのことです。(参考:http://www.transformations.net.nz/trancescript/japanese-resilience.html

確かに ストレスは受けたストレスをそのまま感じているわけではなく
ストレス x 受け止め方(f:個人変数)= ストレスの感じ方 となりますから、変数によって大きく異なります。
変数には、この慢性化だけでなく、環境や、サポート体制、思考パターン、生まれながらの性格的特徴(楽天家、など)そして身体的条件(姿勢や疲労感)などもかかわってくるでしょう。

私個人はヨガの仕事をしていながら恥ずかしい限りですが、かなりこのレジリエンスは低い方だと思います。ちょっとしたことでいじけますし、気分転換も下手です。いつまでも引きずります。心が弱るとすぐ熱や感染症にかかりますし、休息も下手です。サポート体制には恵まれているはずなのですが、慢性化や思考パターンが足を引っ張っている感じです。。

しかしこの変数に変化を与えることができる要素が、注目を集めています。

  • 姿勢
    呼吸
    上手な休息
    瞑想(マインドフルネス)
    EMDR
    ソマティックサイコロジー
  • どれも、能力を著しく高めるオリンピック的視点ではなく「機能を維持する」ことに視点がおかれていることに注目です。
    レジリエンシーを高めるといいますが、高めるというよりは、弱らせないように、あるいはフリーズしないように、スタックしないような心がけが大事だということのような気がします。前述のコラムでも書きましたが、私たちは不利な状況、自己の存在が脅かされるような状況では、固まってしまいます。これを、ゆらゆらとほぐす。それは、脳に直結する「眼」かもしれませんし、自律神経につながる「吸う息と吐く息のリズムと深さ」かもしれませんし、脳や筋肉、内臓を回復させる正しい「休息」かもしれませんし、心の眼を素直にもどしてくれる「マインドフルネス:善悪の判断を一切することなく、目の前の状況を静かに観察すること」かもしれませんし、猫背ぎみの姿勢に逆刺激を与える、背伸び(ソマティックサイコロジー:姿勢が変わると気分も変わる)かもしれません。

    ヨガがレジリエンスを高めるのに有効だといわれるのはこれらをうまく網羅しているからかもしれません。でも、高めるといっても、繰り返しになりますが、やればやるほど、レジリエンスも高めていけば高めるほどいいというものでもないような気がします。

    しかし、ストレスや脅威が多いこの時代を生きていくためには、ヨガが教えてくれる竹のようなしなやかさを維持する秘訣は、覚えておいて損はないのかな、と思うのです。できれば、頭で覚えるのではなく、子供のころから自然と身に付いているのが理想だと思います。子育ての中に、上記の要素をうまく取り入れていけたら、強くて優しい子に向かってくれるのではないかと思うのです。


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